ABBEY ROAD

2019年10月 1日 (火)

‘Anniversary Edition’ 答え合わせ編

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…痺れてる。痺れてる。
ボックスが届いてからの2日間、痺れている。

【5.1】 
まったく関心なかったブルー・レイだったが、ドルビー・アトモス、すげえ。 
ひょっとしたら今回、一番驚いて感動したマテリアルかもしれない。 

金曜からずっと、5.1の魔法陣の真ん中にいて、分厚いブックレットを一ページ一ページ大切に捲っている。 
センターを上げたり下げたり。できれば1chずつダビングしたい。お花畑の中にいるよう。 
私にとって、これは“新しい体験”だった。

【ニュー・ミックス】 
45年もオリジナルに馴染んだ私からすると、ニュー・ミックスは蛇足以外の何物でもないが、一点だけ。
Here Comes The Sunの間奏終わりの2:10、最終的にはずいぶん薄められていた、“チャン!チャン!”を強調するのはやめて欲しかった。 
この曲に45年間持っていたイメージが崩れ、いきなりダサく感じてしまった。 
解散後のジョージのこの演奏も聞き返したが、ここを強調するような演奏はなかった。

Come TogetherやPolythene Pam終わりにもジョンのヘンな声が強調してあったり、ギターのミストーンを強調したり。 
このニュー・ミックスは評価するが、つまらないところでアラい遊びがある。 
死人に口なしである。 
勝手なことをするのはやめていただきたい。 
あなたはジョージ・マーティンでもビートルズでもない。 

(追記) 
かなり辛辣なことを書いたが、iTunesではないソフトで聴いてみたら、これはまったく09リマスターとは違うものだった。 
あいかわらず私は原理主義だけれども、ニューミックスはニューミックスで生々しさを楽しむことができる。 
「蛇足」というのは言い過ぎ。

 
【豪華ブックレット】 
もともと少ないこの時期の写真が集められ、びっくりするような写真もない。 
それでも、“The long and unwinding road that~”で始まるポールの序文は感動的だ。 
曲目解説も詳しい。メトロポリタン美術館のブックレットの横に並べよう。

さて曲感想。

【I Want You (She’s So Heavy)】

ニューマスターでもビリー・プレストン全開になっていたが、オリジナルはそれも訳あってのミックスなんだから。 
もう一度言う。勝手なことをするなジャイルズ。
 
なんといっても、エンディングである。 
前半はトライデントのテイク32、後半は解説書によればリダクション・ミックスのオーバー・ダブバージョン。テイク32にはYeaaah!のあと、既にすでになんかしゃべってる声も入っていた。

後半、これだけ重ねてあって、ギターとかビリー・プレストンとかやりたい放題やってるのを聞くと、元々ジャムをするつもりだったのね。 
だから長めに録音しておいて、フェイドアウトか何かくっつけるかして終わらせるつもりだったのかもしれない。 

リンゴが叩き終えてもまだギターが鳴ってたりするのは何故?本当にこれで終わり?
いずれにせよ、長年のもやもやは解消した(ような気がする)。

あと気になったのが、解説に「1月末の“アップル・スタジオ・パフォーマンス”の合間にポールのヴァージョンが披露されている」というようなことが記載されていた。 
ぜひ来年のレット・イット・ビー50thで登場させてほしい(ゲット・バック・セッションでのジョンの演奏が映像まで流出しているので、混同があるかもしれないけれど…)。

 
【Something】

アンソロジー・バージョンにピアノを追加したデモのミックスらしい。 
ヴォーカルは同じ?ピアノが入っている分、聞きやすくなっていた。 
どうしてTake37を出さないのだろう。あれはあれで味があっていいのにね。 
 
ニュー・ミックスではバイオリンのピチカートがやたら強調されている。蛇足。

 

【Ballad Of John And Yoko】

やっとフルで出ました。 
今更ながら、ジョン・レノンって天才。 
さっさと作らないと、創作熱が冷めると思ったんでしょうね。 
このテイクでほぼ完成している。 

ただ嫌事を言うと、私は昔からポールのドラムスが好きになれない。 
よよかちゃんのほうがはるかにうまいぞ。 
なんかイナタい。 
それが個性、とも言うのですけど。 

いやあ、もっと二人ともノリノリでやってたのかと思ってたけど、そうでもない感じ。
 
あと、解説書にたぶん間違いがあって、「ポールが曲の歌詞を書き留めていた1969年のノートを見ると」とありますが、ジョンの間違いでは?原文を見るとPaul‘s~とあるので、翻訳者は間違ってないのです。

 
【Old Brown Shoe】

この曲も、Take2でほぼ完成してる。 
ここでギターは誰?問題発生。 
ジャングル・ピアノはジョージじゃなさそうなジャングルなので、ポールかジョン。 
解説通りだとしたらポールはドラムスに回っているので、ジョン。 
するとギターはジョージなのだけれど、If I grow up~のところ、歌いながら弾くのは結構難しいですよ。 
リンゴ不在、ていうのは初耳。 

【Oh! Darling】

これもほぼ完成ヴァージョン。 
 
ピアノ誰?問題も発生するが、裏でオルガンのような音も小さく聞こえる。 
 
解説ではこの日、ビリー・プレストンがセッションに参加し、I Want Youのダビングとこの曲に参加している、とのことなのだけれど、今のビートルズ史ではそんなことになっているのですか? 
勉強不足で申し訳ありません。 
4月のセッションにビリーが参加しているなんて初耳です。  

ただし、ここで聞こえるオルガンはそんなテクニックのいるようなオルガンではない。 
ポールが歌うのを途中でやめちゃったりしているのは、あくまでガイド・ヴォーカルだからか?

 
【Octopus's Garden】

リンゴがトチっても本当、暖かい雰囲気が出ている。 
リンゴも謙虚だ。 
音的にはジョージのギターが冴えまくってるアンソロバージョンがいいが、いずれにせよ、Takeごとにいろんな試みをやっているわけではない。 
この曲だけではないけれど。

 
【You Never Give Me Your Money】

これまでブートで聴けたテイク(Take30または40、基本的には“The Long One”のバージョン)以外がやっと聴けた。 
これもかっちり仕上がっている。感動。 
 
まだガイドボーカル的な趣きを残しているけれど、ポールもいろいろ試していて面白い。最高。

気になるのはギター。 
アルペジオはジョージで、エネルギッシュなソロはジョン、というのが今まで言われてきているが、解説ではソロはジョージとされている。 
 
ジョージだったらもっとテクニカルなソロを弾きそうな気がするのだけれど…。 
さらにブートのテイクでジャムに流れ込んでいくバージョンでは、もっとブイブイいわしている。 

「Her Majestyを埋め込むだけでは無為な16分」と思ってた“The Long One”だったが、やってくれました。 
ブートでお馴染みのこの曲のテイク40を正規化してくれてありがとう。 

リリースでは消えている、第2セクションの綺麗なコーラスが聴けるし、ポールのブギ・ピアノも聴ける。 
 
惜しむらくはポールの雄たけびとか、エンディングのピアノとギターがもう少し展開して、ピアノのグリッサンドとか入るところを「いい音で」聴きたかった。

ここで春のセッションは終わり。

 
【Her Majesty】

全テイク放出と埋め込みだけれど、どのテイクも同じ。 
ポールは2002年にこれを演奏した際、もう一度CD聞きなおして運指を思い出したに違いない(ゲット・バック・セッションでも気に入って弾いてたけど)。

Her Majestyの埋め込みについては、ブートのほうが丁寧(爆)。 
頭のところも、ケツのところもどちらも一瞬空いているのでは? 
私は特にケツのところが許せない。 
あそこは被るぐらいにポリシーン・パムの鋭いジャブに繋げないと。

 
【Golden Slumbers - Carry That Weight】 

Takes 1イントロでFool On The Hillを始めるのが面白い。
 
“The Long One”ではTake17が正規化。グッバイ、ワッチング・レインボー。 
Take13のポールだけのヴォーカルとピアノも好きなんだけどな。 
完成版のコーラスが使われている。


【Here Comes The Sun】

この曲のアウトテイクはほぼ聞いたことがなかったが、聞いたことがないということは、極めて短期間にレコーディングされていて(流出していない)ということか。
これもほぼ完成形で、シンセやらストリングスやら手拍子やら入らなくても、すごい魅力的。
 
【Maxwell's Silver Hammer】

ポールがイントロをリンゴとジョージに指示している(が、結局カット)。 
 
ジョンが事故で復帰する前後に短時間で完成させ、ジョン自身は演奏に加わっていないとされているが、このテイクの最後のジョークに声が入っている。  

ジョン・レノンは80年のプレイボーイ・インタビューで、「僕らはアルバム中のどの曲よりも多くのお金と時間を費やした」「覚えているのはレコーディングだけ」「100万回も繰り返させた」と言っていたが、それは誇張が過ぎる。 

結局トゥイッケナムのことを指しているのだと思うが、私自身もこの曲の魅力がわからない人なので、このバージョンでも魅力を見つけることはできなかった。すみません。ジョンのマスタードに匹敵する曲。ポールもなんとか片づけた。

 
【Come Together】

アンソロの「衝撃のTake1」を超えるバージョンではなかったけど、これも完成形。なぜか間奏終わりに止まっている。

 
【The End】

これは収穫。始まる前の試奏、異なるドラムソロ、ソロセクションンの終わり方(最後のセクションはくっつけていた!)。 
いいですね、いいですね。 
 
“The Long One”ではTake 7(RS1)が正規化。


【Sun King / Mean Mr Mustard】

ジョンもご機嫌。Sun Kingはほとんど歌っていないが、Mean Mr Mustardでジョンがなかなか渋い掛け合いを一人でやっている。 
すでにファズ・ベースも入っている。

 
【Polythene Pam - Bathroom Window 】

曲に入る前のポールの打ち合わせのあと、ジョンが「トミーみたいだ」と言っているし、カウントインもピートっぽい。 
後年ジョンはこのB面を評して、「あのロック・オペラみたいなの」と貶していたが、「ロック・オペラ?」と長年思っていた。 
なるほど。 

このメドレーの発想にトミーが関係しているとは思わなかった。 
Sun Kingのフリートウッド・マックしかり、ビートルズもちゃんと新しいアルバム聞いているのね。

いずれにせよ非常に興味深いテイク。 
ビートルズとしてはBecauseを残してはいるが、バンドセッションとしては最後になるセッション。 
 

Bathroom Window についても、ジョージのリバーブ・ギターにリンゴのドラミングがいい感じ。最終テイクへ向けて試行錯誤している。 
So I quitt~でジョンが一瞬歌い出す。 
このテイクにせよ“The Long One”のセクションにせよ、5.1も含め正規ミックスよりもジョージのハンバッカーをはじめリンゴのドラム、ポールのベース、ジョンのアコギのどれもいい。 
なぜ?

 
興味があったブリッジのフェイク・ボーカルは何もなし。 
パムからウィンドウのブリッジのところでジョンのフェイクボーカルを前へ出してくれたのはいいけれど、相変わらずポールの「カモン」「ハイ」は小さいまま。 
もっとあるでしょーよ。

5.1ではジョージのリバーブ・ギター、ディレイがかかる、かかる。ジャイルズ遊びすぎ。

【Because】

ひたすらジョージ・マーティンのハープシコード、ジョンのギターとベース。 
それにリンゴの手拍子。ジョージは何を? 
アンソロジーのボーカルのみより聴きやすかった。
 
あのボーカルも、どうせなら9つに分けて聞かせて欲しかった。

 

【Something [Orchestral – Take 39]、Golden Slumbers [Take 17]】

オーケストラだけか…と期待していなかったけど、少しセンチメンタルな気持ちになった。
ビートルズに対するレクイエムになっている。 

アニバーサリーエディションで披露されたセッションズ。ペパー、ホワイト、そしてアビィ・ロードはそれぞれ違う。 
 
ペパーはレコーディングの過程、ホワイトはリハーサルの過程、そしてアビィ・ロードは完成の過程を見せてくれた。 
 
何せ本作は新曲が少ない。「試しに録る」なんてことはせず、レコーディングの前に十分な打ち合わせがあり、ほとんどの曲はTake1からほぼリリースバージョンと変わらない出来。実験的なのはI Want Youだけ。 
 
ともかく、手元にあるマテリアルの完成。遅れているアルバムリリースの解決。 
その目的に向かって、ビートルズはジョージ・マーティンの指示通りに仕事をした。 
どの曲も、もう曲の熟成とか待っていなかった。そんな時間はなかった。 
 
熟成していないんだったらメドレーにすればいい。 
いまあるマテリアルをともかくリリースできるレベルまで短期間で持ち上げるプロの仕事。 
東芝EMI風に言うなら「錬金術」。スピードがあったからこそ、グループ内も安定していた。  

ポールもメアリー・ホプキンスやアイビーズのように、自分の曲ではビートルズをプロデュースしている。
ジョンも、もういいかな、と思っただろう。
 
長年、アビィ・ロードに持ち続けていた疑問が、気が付けば疑問ではなくなっていた。 
思い描いていた、ビートルズ最後の仕事。そんなものはなかった。 
4人のミュージシャンが短期間に一つの目標に向かって取り組んでいるだけだった。
 
…ただし、それでも“The Long One”の随所では、往年のビートルズのグルーヴを聴くことができる。

それで十分だ。(2019.9.30)

 

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2019年7月20日 (土)

'Abbey Road' 50th Anniversary Edition、 直前対策!

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さあ、9月26日まで2か月ですよ!お父さん張り切っております!
いま流布されている情報をもとに、直前対策をやってみます!
(ニュー・マスターと5.1には関心がないので割愛します)

 

①I Want You (She’s So Heavy) [Take 32 + Billy Organ] 2:47?

公表されたリストは、一応レコーディング順になっている。まずは2月22日のトライデントスタジオから。
たぶん、ビリー・プレストンのオーバー・ダブバージョン。

完成バージョンで聞けるのは前半のボーカルと「She’s So Heavy」以外の部分がテイク32から使用されている。
4月にジョージと重ねたギターやホワイトノイズ、ポールらのコーラスも入っていないテイクになる。

さあ、エンディングはあるのか?フェードアウトか?
惜しむらくはポール・バージョンも聞きたかった(あるなら)。

 

②Goodbye [Demo]

デモ、とあるので2月に録音したデモ。ということはブートで既発のアレか。

 

③Something [Demo]

2月25日のデモ、ということはアンソロジー・バージョン。がっくし。

 

④Ballad Of John And Yoko [Take 7]

ポールがドラムス、ジョンがアコギでボーカルを取るベーシック・リズム・トラック。
断片的に流出していたけど、フルで出たら嬉しい。

 

⑤Old Brown Shoe [Take 2]

4月16日か。ハモンド・オルガンの代わりにジョンのギターが聞ける可能性あり。

 

⑥Oh Darling [Take 4]

4月20日のライブ録りなら、演奏前からジョンをはじめとする楽しい会話が聞けるかも。

 

⑦Octopus Garden [Take 9]

Take2と8がアンソロで出ているが、出来の悪い8の次のテイクなので気合が入っているか。

 

⑧You Never Give Me Your Money [Take 36]

5月6日の最後のテイク。相当完成形のテイクが期待できる。
アンソロにこの曲のアウトテイクは収録されなかったこと、よく出回っているTake30ではなさそうなので、すごく期待している。
36が最後のテイクにもかかわらず、手元のブートに「Take40」がある(何が本当かわからないが)。
このテイクが「36」なら、2番目のセクション以降のハーモニーがすばらしいバージョン。
でも静かなオルガンの後(まだSEは入っていない)、サン・キングのイントロに繋がっているので、「Take40」ではなく7月に入ってからTake36にSIを行ったテイクなのだろう。

 

⑨Her Majesty [Takes 1-3]

これがすべて、というテイク。
ポールの簡単な挨拶とイントロからはじまるのでは。

 

⑩Golden Slumbers - Carry That Wait [Takes 1-3]

これもアンソロでは出てなかったが、ブートでは以前からTake13が出ている。
ストリングスもコーラスもないが、力強いポールのボーカルとピアノが聴けることを期待。

 

⑪Here Comes The Sun [Take 9]

7月7日の完成テイクはTake13なので、少し前のバージョン。
もちろんムーグもコーラスも入ってないはず。
この曲のアウトテイクはほぼ聞いたことがないので、これも期待大。
ジョージのギター・ソロも聞きたかった(あるなら)。

 

⑫Maxwell's Silver Hammer [Take 12]

アンソロではTake5が出たが、そのあと6~10が欠番となっており、21が完成テイクなので、少し変わったテイクかも。
あまり期待はしていない(笑)

 

⑬Come Together [Take 5]

アンソロで衝撃のTake1が出たが、完成テイクの一つ前のテイク。
テイク前のジョンの会話は流出している(十代がどうの、大嫌いな中年頭がどうの)

 

⑭The End [Take 3]

ブートで出回っているTake3はボーカルなし、ソロなし、もちろんストリングスなしなので、それならちょっとつらいなあ…。

 

⑮Sun King / Mean Mr Mustard [Take 20]

7月24日の35テイクのうち、20番目。
興味があるのはMean Mr Mustard で、まだピアノもベース音もタンバリンも入っていないはず。
フル・エンディングはロック・バンド(ゲーム)で公開済み。

 

⑯Polythene Pam - Bathroom Window [Take 27]

7月25日のベーシック・トラックだけど、興味があるのはブリッジ。
例のジョンがマル・エバンスに声をかけたりするフェイク・ボーカルが明瞭に聞けるかも。
前曲同様、特にバスルームはスカスカかも知れないが、かえってビートルズの演奏が堪能できたらうれしい。

 

⑰Because [Take 1]

出た。Take1。ハーモニーが入っていない可能性あり。
…それはちょっと辛いなあ。ロック・バンドの時にそれは流出したのだけど…。
「不満な方はアンソロのアカペラとミックスしてください」というメッセージだったりして(笑)

 

⑬The Long One [Trial Edit and Mix]

予想通りHer Majesty 埋め込みバージョンだけれど、いったいどの曲からどの曲まで収録するのか?
そりゃマネーからジ・エンドまででしょう、いや、それでは冗長だな。
サン・キングからバスルームぐらい?でミックスは?
ブートではずいぶん前からあるので、一回聞いたら終わりになっちゃうような。

 

⑭Something [Orchestral – Take 39]
⑮Golden Slumbers [Take 17]

すでにつぶやきましたが、8月15日のオーケストラだけっぽい。父に捧ぐ気持ちはわかりますが…。

 

というわけで、あと2か月はああでもない、こうでもないと楽しみですわ。

なお音以外では、付属本としてリンダが撮影したスタジオ・セッションでの80枚の未発表写真とケヴィン・ハウレットによる解説書が付くらしいですが、それまではこのYou Tubeでも見ていることにいたしましょう。

https://www.youtube.com/watch?v=c3RCINjO92s

 

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2018年11月 4日 (日)

Carry that “Carry That Weight”

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毎年夏に、アビィ・ロードに関することを書いている。 
 
ほぼ1年に1回の更新ブログだが、今年はいろいろ事情があったので10月末まで書くことはできなかった。 
木曜の夜になって、いきなり「名古屋ドーム、機材席開放!」というツイートが流れてきた。 
 
ふーん、なのだが、心にひっかかりがある。 
 
 
 
というより“Carry That Weight”なのである。 
 
 
初来日の90年。実は世間はストーンズの初来日で盛り上がっていた(笑)。 
かくいう私も、ポールの初来日とストーンズの初来日、天秤にかけていた。 
 
ポールが“Golden Slumbers〜Carry That Weight〜The End”を演奏していると知ったのはいつごろだっただろう。  
 
当時はネットもなかったが、たぶん、89年のツアーの速報をロッキン・オンなんかで読んで知っていたに違いない。 
でもその時点ではまだ来日も決定していなかったはず。 
 
 
一方、ほぼ解散状態だったストーンズはスティール・ホイールズで目の覚めるようなカムバックを果たして、あっと驚くような全米ツアーを開始していた。 
 
タッグ・オブ・ウォー以降の活動に関心を失っていたポールに対して、ストーンズの再始動、初来日には、自分が生きている“意味”がそこにあった(なんと大層な…)。 
 
東京から2時間ほど離れた地方都市に当時住んでいて、2月に2度ストーンズを見た後、年度末の3月にもう一度上京させてほしい、とは言いだしにくかった。 
 
でも本当はすごく後悔をした。
 
 
 
3年後、初めてポールを福岡で見ることができた。人生でベスト5に入る素晴らしいライブだった。
 
しかし、ラストは“Hey Jude”だった。
 
 
9年後、地元関西でポールを見ることができた。セットリストには“You Never Give Me Your Money”“Carry That Weight”“The End”があった。
しかし、“Golden Slumbers〜Carry That Weight〜The End”ではなかった。 
 
 
11年後、また地元にポールが来たが、家族を持ってから高額のライブからはかなり遠ざかっており、食指は動かなかった。
エンディングは“Golden Slumbers〜Carry That Weight〜The End”だった。 
 
 
これではいけない。なんのためにアビィ・ロードを聴き続けているのか?(なんのため?)   
 
反省した私に、すぐに飛び込んだのがその翌年の来日だった。
チケットを押さえた。アリーナだった。  
セット・リストは“Golden Slumbers〜Carry That Weight〜The End”だったが、これはポールのほうからキャンセルされた。
 
 
 
翌年、そしてその2年後にもポールは来日した。いずれもエンディングは“Golden Slumbers〜Carry That Weight〜The End”だったが、東京のみだった。この目的のために、一日仕事を空けて上京はできないか。
 
 
今回、やはりセットリストは“Golden Slumbers〜Carry That Weight〜The End”だった。 
 
 
 
振り返れば、ポールの単独公演で、“Golden Slumbers〜Carry That Weight〜The End”を“やらなかった”ツアーだけを私は見ていることになる(これはこれで貴重かも…)。
 
が、今回も関西での公演はなかった。 
これでこれまで通り諦めもつくし、チケットも名古屋からすぐ売り切れていった。
 
で、冒頭の情報だ。
 
 
今度こそ、ポールの“Golden Slumbers〜Carry That Weight〜The End”を体験できる最後のチャンスになると思う(そう思いながら3、4回来日してるが)。
 
 
名古屋なら、4時頃会社を抜ければ間に合うし、その日のうちに帰ってくることもできる。…なんてね。
 
 
 
各ツアーでのプレイの状況は映像や音源で確認している。私に不足しているのは“体験”だけである。きっと2002年のライブの時のように、さほどの感慨も得られず、90年のポールと違って音程がふらつく“Golden Slumbers”を豆粒ほどのポールしか見えない、周囲が大合唱している空間で聴いても、私が得ようとしている体験は得られないはず…
 
 
 
…それでもいいのだ。あと7時間、チケットはあるだろう。 
どうしよう。 
 
木曜日から何度もぴあを覗き、クレジットカード情報を入力するところで逡巡している私…。 
 
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2017年10月28日 (土)

オリジン

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夏に点いてしまった音源熱が止まらなくなってしまった。なんとかUKオリジナル(アビィ・ロードがリリースされた69年の英国初回盤)を所有したい、という物欲に駆られてしまった。

音なんか聴ければそれでいい。バカ高いミントなんかはいらない。50年近く前のブツなので、音が悪いのは仕方ないが、針飛びだけは困る。1stプレスを聴きたいので、スタンパーはYEX749-2/1で。

ジャケットは2の次で、ダーク、レフトのアップルに拘らないし、もちろんHer Majestyの表記の有無にも拘らないが、コーティング・ジャケットは所有したい。

2か月、Discogやらレコード店やら、フェアやらヤフオクやらいろいろ探し回って、やっと良心的なのを見つけた。価格も昔ブートを買い漁っていたころを思えば、高くない。

実は、それにもかかわらず、ずいぶん逡巡した。ブツを見つけてから3週間かかった。僕は、コレクターではない。こういう、価格にプレミアムが乗る商品には基本的に手を出さない。
音は24ビットがいいに決まっている。どのみちウチのアナログ・システムなんかに再生能力はない。でも買おう(爆)。

郵便を開封する。どきどきする。ああ、ここまで43年かかったよ。ずっと聴いてきてよかった。やっとレコーディングほやほやの盤の音が聴けるよ。

出てきたジャケットは僕が知っている国内盤よりも、ずっと赤味があり、空と裏ジャケのワンピースは青い(国内盤は白っぽい)。ビニル・コーティングは光沢があっていい。

驚いたのは、ジャケットと、インナーと、盤(ポリ入り)を別々にして封入してあったこと。業者さんは別々に保管していて、店頭でお客さんが試聴できるようにしていたのだろうか。それとも、何かの事故防止だろうか。

ジャケットを少し広げて、中を嗅いでみる。うん、輸入盤の匂い。
さて、盤を見ると、おお!ダークだ。趣あるなあ。リンゴが小さく、文字が細い。盤の状態はそれなり。

A面に針を落とす。すぐにCome Togetherが始まる。うわっ、何だこれ?
このあいだ、さんざんいろんな音源利聴いたのに、この感覚はなに?
非常に直感的な言い方をすれば、「懐かしい」。

きっとそれは、UKオリジナルだからとか言う前に、プチプチいいながらCome Togetherを聴くこと自体、38年ぶりだからだろう(笑)。でも迫力はある。なかなかに興奮する。
ちなみにB面もそうだったけど、ガイドの溝がほとんどなくて、針を下ろすと、上記のとおりすぐに曲が始まります。

しかし、あとでもう一度79年盤(EAS)を聴きくらべると、これもいいのだ。前回79年盤に感動した話を報告したが、つまり、オリジナルでもアナログのよさをまたまた感じることになったのだ。ヘッドホンでもう一度聞き比べしようっと。

セパレートはもちろんCDや79年盤には及ばないが、これは盤の状態にもよるのだろう。基本はクリアかつラウド。まあプラシーボ効果もあるのだろう。オリジンを聴いている、という自分に酔ってしまう。笑ってください。安い買い物だった。

今日から、僕にとってこのレコードがオリジンになる。何を聴くにも、これがオリジンになる、そう思いました。

最後に余談を一つ。なぜかAB面とも内周に近づくほど、音が歪んでしまう。劣化する。
「それはあなた、当たり前でしょう。レコードは内周差と外周差があって、カッティングが…」という話はわかっています。でもチリつきが多いのはなぜ?

それは、今から48年前の持ち主が、A面の斬新なエンディングと、B面のシークレットトラックに驚いて、何度も何度も針を落としたから、というファンタジーにしてしまいましょう(笑)。


2回、3回と聴くうちに、プチプチとかノイズがまったく気にならなくなった。いい盤にめぐり合えた。この盤を所有してこられた方、本当にありがとう。2017102816440000

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2017年9月 2日 (土)

2017年、夏休み自由研究。

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今年の夏は、よくアビィ・ロードを聴いた。

先に書いた音源に触発された。

追記になるがあの音源を調べるうちに、それらは大体、今から8年前にビートルズのゲームが出た際に、ジャイルズ・マーティンがいろいろ掘り出してくれたものから寄せ集められたものだった。
そんな音源を辿ってブートを探っていると、私が高校時代に欲しかったプロユース盤、それから大学に入って少し興味が薄れた頃に出回っていたモービル・フィディリティ盤、日本の初回回収盤の音源を入手することができた。
ついで、といってはなんだけれど、手元にある音源を片っ端から横並べにして聴いてみた。

①プロ・ユース盤

②79年ごろのアナログ日本盤

③モービル・フィディリティ盤

④83年盤(いわゆる「回収盤」)

⑤87年盤

⑥09年盤

⑦自称“モノラル”盤

⑧Rock Band盤

⑨24bit USB

これらはいずれもデジタル化されたものをいったん私のPCに落とし、それからちゃちMP3プレーヤーに落とし、ちゃちイヤホンで聞いたものですので、最初にお断りしておきます。

本当は①の前に74年頃に買ったアナログ日本盤を入れたかったが、押し入れからは出てこなかった。ホワイトアルバムとともに、どこに行ってしまったんだろう。中坊時代、片方のステレオずつ聴いて“I Want You”や“Polythene Pam”でポールの小さなフェイクボーカルが聴こえたときは喜々としたものだった。
内容的にはおそらく、②とほぼ変わらないものと思う。当時両方とも所有していたが、同じプレーヤーで聴いていて違和感はなかったから…。

(調べたところ、私が当時買ったのは73年盤で、「A面の野性味、B面の叙情性 何人も否定し得ぬビートルズ・ミュージックの錬金術―」というキャッチ・コピーのついたひょうたん帯でした。
それに対して①は、ひょうたん帯のあと76年に有名な国旗盤が出て、それからプロ・ユースとピクチャー盤を挟んで①の79年ボックス・セットがプレスされているようだ)

長くなるが一つずつ説明する。

① プロ・ユース盤

それにしても、プロ・ユース盤は凄かった。発売当時、私は高2だったが、少し高かったので買うのを躊躇した。当時の私はこの音の違いに感動しただろうか?
 ネットでこの盤の感想を追うと、区々であるけれど、私の耳にはリマスター盤ほどではないが音圧が高く、高音、中低音とも出ていて、特にA面の曲でリンゴのスネアが跳ねているのがわかるし、ピアノでコードを連打すると耳が痛いぐらい。
UKオリジナルに近いのは、この盤のように思う(私が聴いたことのあるオリジナルの印象ですが)。24bitよりも臨場感を感じることができた。

②79年ごろのアナログ日本盤

 私がアビィ・ロードを買ったのは74年の秋だった。その盤を擦り切れるほど聴いた後、80~81年頃にLPのボックスセットを買ったのだけど、その中の一枚。時代はすぐにCDになったのと、大学時代プレーヤーを持っていなかったので、この盤はほぼミント状態。

 はっきり言って、これはこんなにいい音がするなんて思ってなかった。あるいは、こんなにいい音で中学、高校、大学とアビィ・ロードを聴いていたなんて!と感動した(正確にはテープに落としたものを)。

 まず、分離がいい。これは後述するが、たぶん…デジタルマスタリングせずデジタル化すると、ある音の左右バランスなど、微妙な音がカットされて情報量が少なくなるのかもしれない。“Come Together”のマラカス音も非常によく聴こえるし、他の曲でもストリングスがよく聴こえる。デジタルに比べて音圧がやや低い(でも④⑤よりも高い)分を持ち上げてやると、高音も低音もそこそこ出ている。

ただし、分離がいい分、イヤホンで聞くと、若干ドタバタする。45度角の音の定位なんてない。90度、90度(笑)。ま、それはちょっと極端な言い方だけれど…。

後で⑦のところでも触れるが、聴き比べて感じたのは、ビートルズはステレオ・ミックスしか作らなかったこのアルバムでさえ、モノで聴いた時の音像をイメージしていたのではないか、ということだ。

③モービル・フィディリティ盤

ネット情報では、カッティングのみならず、独自のイコライジングが施されていることも公表されているらしい。
高音域がかなりカットされているようで、ボーカルがやや引っ込んで聞こえたり、シンバルのチンチンいう音は聞こえない。かなり中低音に触れた音、もう少しくぐもった音。

不思議なもので、このイコライジング、ある意味耳障りな高音が聞こえなくなり中低音のリズムが強調されると、ノる。コーラスが「聞こえないから」すごく綺麗に「聴こえる」。普段高音にかき消されているジョージのフィルインや、ムーグの音がよく聞こえたりする。これはこれでアリだと思う。なんか、アビィ・ロードの新しい聴き方を呈示されたような気になった。

④83年盤(いわゆる「回収盤」)

②の79年頃のアナログと聴き比べると、一気にデジタルの音になる。中低音の出が違うのと、②とはバランスが異なっているが、これはマスタリングを触ったのではなく、「触らなかった」からこんな音になったのでは?

⑤87年盤

はっきり言って、今回この音が一番ショボかった。デジタルの音だが、痩せて聴こえる。高音も低音も出ていない。ベースも、エレキの低音とやや被っている。この音を長らくデフォで聴いていたとは…。

仮説その2。ジョージ・マーティンはCD化に際し、④の音になるのを回避したのでは?
ヘルプ!とラバー・ソウルはミックスをやり直しているし、このアルバムに関しては“I Want You (She's so heavy)”のホワイト・ノイズが、CDのダイナミック・レンジでは聴くに堪えない音になるのではないか、とエンジニアが懸念した話が「レコーディング・セッション」にも記載されていた。…②④に比べ、少し落ちているかな?

仮説その3。当時(69年)は、結構適当なステレオ・ミックスだったのかもしれない。要は「モノラルで(ラジオから)出てきた時に、どんな音になるのか」ということに心血が注がれたのではないか?

⑥09年盤

書くまでもないが、音圧が違う。詳細は⑨で。

⑦自称“モノラル”盤

もうひとつ、捨て置けないのが出所不明なモノラル音源である。これがいい!
単にステレオミックスをトラックダウンしたものだろうが、定位の動きに耳を奪われることもない。もっと音が飛んでしまうかと思っていたが、“Come Together”のマラカスも聴こえる(拘る!)。

なぜかわからないが、ビートルズはモノ、と云われる所以を感じてしまうのだけれど、仮説その3を確信。蛇足だが、プレイリストにモノ・ボックスを入れているのだけど、そこに入れてシャッフルしても何の遜色もない。

⑧Rock Band盤

09年、ジャイルズ・マーティンが「ケーキをもらったとき、すべての食材を分けて、あなたが知らないうちにそれを元に戻しておく」作業で作ったゲーム用のリミックス。

ゲームはプレイヤーがギタリストかドラマーかベーシストにならなければいけないが、当時のビートルズは少ないトラック数でレコーディングしていたため、それぞれの演奏はマスターでも分離していないものが多く、あらためてマスターからトラックを分離させてマルチトラックを作り、それを再度ミックスするという作業を行ったもの。

ゲームの45曲(47曲?)に加え、ラバー・ソウルとペパー、アビィ・ロードの3枚はアルバム単位で作業されている。ゲームなので、それぞれの曲にカウントインが入っていたり、チャットが入っていたりする(“Her Majesty”にジョンの大声のカウントが入っているなど、意味不明なのも多し)。

リミックスはできるだけ元のミックスを崩さないように行われたらしいが、私が気づいたの“I Want You (She's So Heavy)”のビリー・プレストンのオルガンが中央に定位しているな、とか、Her Majestyが右から左に回らないな(たぶんボーカルを分離するためと思われる。“Sun King”のイントロなんかは回っている)、ということぐらいだった。ところどころフェイクボーカルも残っている。

⑨24bit USB

モービルもプロ・ユースもそれぞれ個性的だが、感心するのは24bitのUSBだ。一言で言えば、「音の情報量が多い」。

例えば「赤い屋根」と言うとき、アナログは赤一色だけれど、デジタルは何種類かの赤系統の色で屋根が塗られているのが私でもわかる。時に光沢の有無さえ感じられる。地上波と、ハイビジョンの違いと同じ。

特に楽器、ベースの音が顕著で、モービルもプロ・ユースも正規盤よりも低音は出ているものの、音色は赤を強くしたり、弱くしたりといった変化しかない。これでは、リンゴがシンバルのどのあたりを叩いているのかもわかる。

さて総評。デジタルがすべからくいい、というわけではない。

4Kが8Kになって、近眼で老眼の私に情報量は多すぎないか。
モービルやプロユースのようにカッティングから見直し、それぞれの制約の下で特性が決定される。デジタルのような解像度を競うのではなく、それぞれのアビィ・ロードの解釈が提示されている。

デジタルは贅沢である。贅沢したい場合はできるだけ24bitを聴く。しかし、当時のEMIがベストとしたUKオリジナルに近づこうとしたのはプロ・ユースだろう。でもビートルズはこのアルバムまでステレオ・ミックスの制作の原則は「モノ・ミックスを基準にする」としていたならば、目指したのはモノかもしれない。待て、モービル盤の暖かさも捨てがたい。

そんなことを考えながらアルバムを聴くと、なんかいい食材をいろんな料理法で味わうような贅の極みである。
実は、上の9種類以外にも音源をいくつか聴いた。マルチ・トラック・セパレーテッドも聴きなおしたし、16bitも聴いたし、Rock Bandのカラオケバージョンも聴いてみた。飽きない。

そうなんだ。このアルバムは、素材に本当に素晴らしい仕事がしてある。音質、音圧、音像、そんなことを脇に置いて、43年間聴いてきた名作である。

そのことがあらためて感じられた2017年の夏だった。

 

(追記)デアゴ盤は未聴です。

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2017年7月 8日 (土)

アビィ・ロードの夏再び

アビィ・ロード・セッションの時期になったので、久しぶりに何かアビィ・ロードに関する記事書くという、恒例企画(?)をしてみる。

You Tubeで今年2月頃にアッブされた音源で、ブートでは遅くとも2、3年前には出ていたようだけれど、正直77年にリリースされたWatching Rainbows、94年にリリースされたアンソロジー3に匹敵する出来だった。
この音源はフラグメントが多く、テープの前後に付いていた音源のみである。どうやら、09年に出たROCK BAND音源(演奏シミュレーションゲームで、その制作のためにリミックスを行ったほか、曲の前後に会話やカウント、エンディングなどを付加したもの)及びその流出なのかもしれない。アビィ・ロードだけではなく、他のアルバムも大量に出ているようだけれど、すごく貴重だった。

以下、曲ごとにコメントします。


The Ballad Of John And Yoko(4/14)
のっけから凄い音源で、おそらくこの曲のデモやアウトテイクが出たのは初めてではないか?しかも短いながらジョンのヴォーカルはいきいきとしており、このままリリースしてもいいのでは?と思う出来。遠くに聞こえるドラムはポールなのかもしれないが、本当にジョンはギター一本のテイク1ですでに完成している。個人的にはオフィシャルテイクのアレンジはあまり好きではない(なんか中途半端感がする)ので、スワンプっぽいのを目指したのかもしれないけど、B面のOld Brown Shoeの素晴らしいアレンジには負けていると思う。ぜひフル・バージョンで聴きたい。

Oh! Darling(4/20)
4月のホット・アズ・サン・セッションより。この曲ではリンゴがフィル・インを試行錯誤しているのがよくわかる。ジョンも元気。

Octopus's Garden(4/26)
これもホット・アズ・サン・セッションより。アンソロジーでははっきりとわかったが、ジョージのギター主導の曲。69~70年の彼のギターは、ひょっとしたら彼のキャリアのピークに違いない。

You Never Give Me Your Money(5/6)
かねがね疑問だった「ギターソロは誰が弾いているか問題」は、この音を聴くと解決。ピアノの音と同時に聞こえることと、この独創性は…やはりジョンで決まりか。

Her Majesty(7/1)
言われないとわからない。ポールがちょっとギターを弾いただけ。

Golden Slumbers(7/2)
今度はベースとピアノが同時に聞こえる。ということはベースはジョージ。

Here Comes The Sun (7/7)
ギターとドラムスとベースが聞こえる。おそらくジョンが交通事故から復帰する前のセッション。なんだ、ポールとも和気あいあいじゃないか。

Maxwell's Silver Hammer(7/9)
ジョンをして「どのレコードよりも時間とお金を使った」と言わしめた、悪名高き(?)セッション。Ob-La-Di,Ob-La-Daもそうだけど、ポールには発想をなかなか形にできない曲がままある。ムーグと他のメンバーに助けられて何とか形にはなっているが、他の楽曲群の出来からは少し劣ると言わざるを得ない。

Something(5/2)
この曲のレコーディングにはジョンは参加していないと言っていたが、冒頭にジョンらしき声が?
マル・エバンスに何か指示を出している。

Come Together(7/21)
これは既出音源だが少し長く、歌詞に言及したり、有名な「中年野郎」発言がある。

Sun King(7/24)
ジョンが全然違う歌を歌い出す。Her Majestyと同じく、言われないとわからない。アンソロジー3のAin't She Sweetのほうがより同じセッションのような気がする。 それにしてもあれは期待外れだったなあ…。フリートウッド・マックのアルバトロスの完パクだと思うが、この前の曲はチャック・ベリーの完パクだし、病み明けのジョンはやっている。

Polythene Pam/She Came In Through The Bathroom Window(7/25)

いきなりカウベルが聞こえるが、これはメドレーのブリッジ部分のリハーサル。このジョンとポールのやりとり、そこに入ってくるジョージとリンゴ。この音源の最大の収穫は、この2分間だ。リンゴがアンソロジーで、アビィ・ロードについて「音楽に集中してる時の僕らは違う。演奏を聴くとノっているのがわかる」と言っていたが、まさにその息づかいを感じる。
ちなみに“Hello?”のノリは、Sgt. Pepper Outtakes Medley のLucyのところでも聞ける。

このメドレーの後、残すレコーディングは1曲(Because)で、ジョージ・マーティンの言う通りに仕上げたのだろう。水曜日(7/23)のThe End セッションがとてもよく、その勢いで翌木曜日(7/24)にSun king/Mean Mr Mustard セッション、そして週末金曜日(7/25)のこのメドレーセッションに挑んでいたのだろう。このメドレーこそがビートルズが4人揃って演奏した最後のセッションに違いないと思う。充実した3日間だ。


こうやって書いてはじめて気づいたが、この音源、Somethingを除き、レコーディング順に並べられている。これは確信犯で、ちょっと擽られる。だから、I Want You (She's So Heavy)  が入ってっていないのは一番早い2月のセッションだからかもしれない。Somethingも、7/10から18までにリメイクがあったのかもしれない。 それぞれの曲のあとに私が推測するレコーティング日を入れてみた。


Because

これも既出音源だが長く、リンゴがハンドクラッピングをしながらふざけている。  

いかがだったでしょうか。フラグメントばかりだけど、2年後のデラックス・エディションが期待できるのではないでしょうか。
I Want You (She's So Heavy)のエンディングも聴けるかもしれない。

繰り返しになるが、この音源の収穫は「ビートルズは最後まで熱かった」ということが確認できたことに尽きる(Ain't She Sweetのようなやる気のない演奏ではなく…?)。

またアビィ・ロード熱が再燃してしまった。

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2011年2月11日 (金)

マルチ商法。

ブートを書かないという禁忌をまた破って、少し書いてみる。何せ、私の三十有余年に及ぶブート経験の中でも驚愕に値するブツだ、と思うのでちょっと興奮している。

ビートルズのブートは、アンソロジー・プロジェクトで焼き野原となり、残る正規音源の未CD音源も、キャピタルシリーズと一昨年の圧倒的なリマスターで、ペンペン草も生えない状況となった、と勝手に思っていた。
だから、この“ABBEY ROAD MULTI TRACKS SEPARATED″というブツは去年の秋にリリースされていたにも関わらず、まったく知らないでいた。

Abbey_road_multi_tracks_separate_2 ブートというのは、大まかに言えば“公式発売されていない″ライブ音源、アウトテイクの類いである。だがこのブツは、そのいずれでもない。なぜなら、“公式に発売されている″。
ではなぜ、そんなものに正規の3倍以上の価格がつけられていても買うのか。なぜなら、1曲がこれにはトラックごと収録されているからである。
ラーメンではなく、茹で上がった麺と、熱々の2種類のスープと、具材が別々に出て来るようなものだ。しかも40年前の。

凄い時代になったものだ。まさか、こんな時代が来るとは。今までのブートは、いわば店主が試作のラーメンを勝手口外のゴミ箱に捨てたものを、どこかの食うに困った人が拾っていって、物好きな人に高値で売りさばいていたようなものだが、今回は、厨房の中に入らないと入手できないブツが流出したようなものだ。
他のマルチトラックスのラインナップを見ると、必ずしもすべてのアルバムから流出しているわけではなく、どーも2009年にジャイルズ・マーディンがゲーム“Rock Band″製作の際にマルチミックスを作っているので、その時に流出したのではと睨んでいる。

さて内容はというと、音質は非常に良く(一説にはMP3)、ステレオ収録されているように聞こえる部分もある。マルチトラック、といいながら実はマルチトラックではない。何度もリダクション・ミックスが済んだ、最終5トラック分
に過ぎない。曲によって異なるが 、5トラック分収録されている曲が多い。ストリングスが入っているし、“MEAN MR.MUSTARD″“POLYTHENE PAM″は繋がっているので8月も中旬の状態に違いないのだが、コンプリート・レコーディング・セッションを読み返してもよくわからない。

何より、“HER MAJESTY″の“最後の一音″が残っているのがよくわからない。先の2曲にあったのを切り取って最後にくっつけただけなら、一音あったらおかしいことになる。蛇足だが“ROCK BAND″シリーズではカウントインからあの大音量の“最初の一音″となるようだが、それはフェイクだと思う。また、完全収録としながら、“I WANT YOU″はどのトラックも2分46秒しかない。この曲こそ、“最後の一音″が聞きたかったのだけれど…。

ともかく、「焼け野原」だと思っていたビートルズのブートは、“ROCK BAND″シリーズにせよこのブートにせよ、これまでのブートからは新しい局面に入り、マルチトラックの“ある”トラックを聞かせるブートが流行っていて、トラック数だけ、テイク数だけブートで出せるのなら本当に「マルチ商法」なのかもしれない。

どの曲も、ああ、こんな音が入っていたんだという驚きは売り文句どおりで、カウントインやフェイク・ボーカル、うっすらとしたガイドボーカルも聞こえる。“I WANT YOU″のビリー・プレストンのハモンドオルガンとコンガのトラックなんか、ずっと聞いていたい。
ポールのピアノに併せて歌ったり演奏したりすることもできるし、この上ない贅沢ができる。

1曲1曲書き出すとキリがないので、またの機会にしたいが、しかしなによりこのブツを入手して感無量だったことは、このアルバムにこだわって約40年、HPに書いて10年たっても、またアルバムの印象を変えるような感想がもてたことだ。

“COME TOGETHER″を除くA面曲と、“YOU NEVER GIVE ME YOUR MONEY″は春にほぼ完成していた。つまり、4人最後のレコーディング・セッションというのは残りの曲の完成に心血が注がれた、という印象は10年まえにホームページを立ち上げた時から変わらない。
あれだけの曲群を完成させ、ミックス・ダウンまで2ヵ月弱、というのは土台無理だ。で、今回聞いて、夏のセッションの最後の輝きは“POLYTHENE PAM/SHE CAME IN THROGH THE BATHROOM WINDOW″だと感じた。リンゴの言う「ノッてる」感がどのトラックにも溢れている。“COME TOGETHER″や“BECAUSE″、“THE END″はどうなんだ、と言われるかもしれないが、ジョンの2曲ともうひとつのジョンのメドレーについては他の3人の「手伝っている感」が強い。“THE END″もノッてはいるが、それはギター・ソロだけだ。

あとの時間は自分の曲に全力を注ぎに注いだ。そこには、互いに協力関係があったような愉しさを聞くことは、私にはできない。そもそも、互いに関心があったかどうかもわからない。

もう一度40年近く前のことを思い出すが、ビートルズが“COME TOGETHER″のような、これまでのビートルズにはないような曲をA面1曲目に披露し、そのA面は斬新な決着をつけた後、B面後半は一気に畳み掛ける。どの曲のイメージも、アルバム自体のイメージも、「洗練されている」「クールである」。裏を返せば、これまでのビートルズにあった「親しみやすさ」がなく、A面もB面も唐突に終わる。それまでのビートルズのどのアルバムとも違う、異質なアルバム。それは、自分の曲に全力を注ぎ、他人の曲には最大の協力を惜しまないがでしゃばらず、ジョージ・マーティンの言う通りにしたアルバム。それゆえ極めて完成度が高く、マーティンも含め全員が慎み深い。おふざけやお遊びがなく、あっても計算されている。
このアルバムのサブタイトルは“完成”なのだと思う。“GET BACK”もグループもマネージメントも暗礁に乗り上げているが、ともかく、2月以降のマテリアルを短期間でちゃんと完成させて(そのためにはジョージ・マーティンの助力も得て)、曲が足りなければ補完して、夏の終わりには1枚リリースする、それが目的だった。“完成”だったからこそ、アルバムタイトルに“EVEREST”が候補となったのかもしれない。その完成は、最高峰を制覇したのではなく、“ABBEY ROAD″にあるスタジオで行われたビートルズ最後の作業だった。あとはポピュラー・ミュージックの歴史に語られることなのである。

上記音源が見つからなくてすみません。他のマルチトラックスから。
ハーモニーグループとして秀逸なグループだったことに、いまさら驚く。

ピアノが素晴らしい。R&Bっぽい。

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2010年2月27日 (土)

アビィ・ロード・スタジオ、売却危機から一転重要文化財に

Stjohnswood2_3
一応なんかこんな名前のブログをやってますので何かコメントしてみますが、

「別に横断歩道が売却されるわけではないし」。

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2009年12月 6日 (日)

ミニ・ドキュメント(ミニ)

さて、ミニ・ドキュメントでがっかりしたことがある。アビィ・ロード付属のドキュメントに使える画像が少ないのは想像に難くないことだったが、アンソロジーに引き続き、またしてもホワイト・アルバム、またはゲット・バックレコーディング期の写真を使用していることだ。特にジョン。自動車事故の影響で参加が遅れたことも手伝って、さらに画像がない。しかしおそらく、69年2月から70年1月にMBEを返上するまでの1年間、ジョンは髭を落としていないはずだ。すぐに判ってしまう。69年4月のホット・アズ・サン・セッションの写真(ジョージに髭がない)は、まだアビィ・ロードに収録された曲のレコーディングがされているので許されるのだけれど…。

それにしても、アンソロジー・ブックが出版された時は驚いた。数枚ではあるが、今まで見たこともないレコーディング時の写真が掲載されている。まるで昨日のことのように…。

Photo71 John3

Paulgeorge

ミニ・ドキュメント全編を通して用いられている、写真を複数重ねて立体的に見せる手法-レイヤーと呼ぶよりはもう少し技術的な処理は好感が持てた。特にまるでメンバーが動画でアビィ・ロードを横断しているような処理は、子供だましだと思いながらも、感心した。
それと先日紹介したBEATLEGでも早速触れられていたが、ラスト・フォト・セッションでのジョンがポールに話し掛ける場面。この日撮影された写真の何枚かはポスターを買ってきたが、ビートルズとして4人最後の仕事で交わされた会話は、どんな内容だったのだろうか。

おそらく最初のフォトセッション、そして最後のフォトセッション。
6209 Tithin2

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2009年11月14日 (土)

アンオフィシャルなオフィシャル解説

リマスター音源検証本が出ていないか、と本屋に行く度に捜すけれど、どうも琴線に触れるものがない。そんななか、遂に「これだ!」というのが出た。ビートレッグの12月号だ。

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まあ、マニア向きと言えばマニア向き、というかブート・ファン向きではある。もともとブート音源の細かい比較をやってる月刊誌だけに、こういう企画はおてのものなのだろう。
ブート比較雑誌がオフィシャルの新盤と旧盤の特集をやる、というのもオカシイが、そこはしっかりモノ、オリジナル・ステレオ、レギュラー・ステレオ(87年版)の比較に加えて、ブートにももちろん言及している(笑)。
さらにミニ・ドキュメンタリーの音源、同時に発売されたゲーム音源、果てドクター・エベッツの引退声明(!)まで約70頁に亘って特集している。

リマスター音源として取り上げられているのは110曲ではあるが、どれもなぜそのバージョンが良いか明白で、痒いところに手が届いている。ミニ・ドキュメンタリーの音源検証は胸のつかえが取れる思いだし、今後も他誌では取り上げられないだろう。“買い″である。

(惜しむらくは、ただ一箇所、“Maxwell's Silver Hammer″のところで、「リンゴの曲だから」とあるのは、“Octopus’s Garden”の取り違いであり、痛恨のミスである。)


頭に1,2,3,…というジョンのカウントインが聞こえる。もちろん初登場。

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