ZeppナンバでJokermanに会う
ボブ・ディランの最終公演に行ってきた。
直前に気がついたが、初めてディランを見たのが94年の大阪城ホールで、雷に撃たれたような衝撃を受けてちょうど20年だ。
この人、何度も雷を落としてくれている。初めて「ハードレイン」TVを見た時、「オー・マーシー」を聞いた時、グラミー獲った時、30周年コンサートを見た時。
実は今回、ちょっと逡巡した。平日だということと、固定セットリストだということと、前回、ZEPは相当疲れたこと。結局、最終日に2階席が取れたら行くことにしたが、これがアッサリ取れてしまい、結局大阪公演は最終日以外ソールドアウトにはならなかった。
2階席は本当にVIP感がある。先頃のストーンズやポールのVIP席の価格と較べても、この距離でステージが見えるならお得だ。優先的に入場させてもらい、階段で一般客をシャットアウトし、トイレにも行ける。何しろ、みんな立ってるのに席が用意されている。
こういうこと書くと鼻持ちならないが、しかし、これは後で少し後悔することになる。
四半世紀続いたネバーエンディングツアーは2年前に終わっている。今は単にテンペストツアーで、テンペストからの曲が多いのは当たり前だ。もう以前のようなオープニングアナウンス(…Ladies and Gentlemen, Would you please welcome Columbia recording artist.....Bob Dylan!) もない。何せ1曲目は「シングス・ハヴ・チェンジド」だ。「時代は変わる」ではない。
「今回のライブは完成度が高い」とか言われているが、この四半世紀が日替わりだったんだから、1年以上固定セットでやれば当たり前に完成するだろう。「ボブも年齢からか、今回は休憩を挟んだライブとなっている」と言う人もいるが、ネバー・エンディング・ツアーが始まって以降は、今回のツアーが一番曲数が多いはず。その前に20数曲やってた時代にも、何らかのインターミッションがあったと思う。
「知っている曲が1曲もなかった」と言う人までいる。…少しぐらい勉強してこいよ。それとも「風に吹かれて」知らない人が「知っている曲」って、「ライク・ア・ローリング・ストーン」のこと?
ともかく、彼はそこがZepp
Osakaであれ、ロイヤル・アルバート・ホールであれ、同じ機材、セットリストでパフォーマンスを行っている。したがって、今回最終公演だからと言って2回アンコールをやったり、レア曲をやったりなんてないな、と思っていた。
「テンペスト・ツアー」なんて言いながら、あとからセットリストをもう一度見直すと、テンペストからの曲が披露されるのは6曲目以降である(「デューケイン・ホイッスル」)。続いて、「ペイ・イン・ブラッド」を演奏した後は「アーリー・ロマン・キングス」まで4曲を挟むことになる。つまり、「知っている曲が1曲もなかった」と言う人は、初めてボブのライブに来たか、36年ぶりに来たかのどちらかだろう(36年前も相当なアレンジだったが…)。
私は、彼の全作品から厳選された80年代までの選曲と、それ以外の曲との対比がとても気に入った。「シー・ビロングス・トゥ・ミー」「ホワット・グッド・アム・アイ?」「ブルーにこんがらがって」「ラブ・シック」「運命のひとひねり」「見張り塔からずっと」「風に吹かれて」…。とても大事に歌うボブ。とても大事に聴くオーディエンス。
一方、「フォゲットフル・ハート」と「スカーレット・タウン」は極上のバラードだが、それ以外はラテン風、ジャズ風、カントリー風であったり、「ラブ・アンド・セフト」以降どんどん顕著になるボブの吹っ切れ感が反映された楽曲になっていて心地いい。本人が一番心地いいのだろう。このあたりがポールやミックと違うところかな。
さて、終わってから3日が経ったけど、喪失感がハンパない。しょうがないのでYou Tubeで追体験している。
さっき、「後悔した」と書いたけれど、2階席はノリが悪かったのだ。遅れてくるヤツは多いわ、静かな曲でスマホ開くわ、中にはタブレット開いているヤツまでいた。これ、この間ニューヨークでも、映画館やミュージカルでスマホチェックしているヤツがいたので、全世界的な問題なんだろうね。
おまけにドリンクセットは余計だ。ビールのゲップが臭う。
で、結局最後まで立ち上がることはできなかった。
1階に行けばほとんど見えなくて、相当しんどいことになるのだろうけど、立っていれば今回のライヴの印象を少し変えたかも知れないな、と思った。
でもツィッターなんかでは、みんな詰め込み過ぎだ、前回の南港のZEPのほうがよかったと言ってるので、私の言っていることは的を得ていないのかもしれない。
少なくとも「世界がうらやむ」ようなものではなく(前回のコピーは「最初で最後のライブハウス・ツアー」だったが)、確かに1階は身動きがとれる状態ではなくて、中段から後ろは動きが少なく感じたから、やはり巡り合わせだったのかもしれない。
前回出会った視覚障害のある彼は、今回も来たのだろうか。
思えば20年前の大阪城ホールでも、結局最後まで立ち上がらなかった気がする。アンコールも「やせっぽちのバラッド」と「悲しきベイブ」だったので、やっぱり立ってなかったのだろう(「マギーズ・ファーム」では立ったか?)。
あの時は、立ち上が「ら」なかったのではなく、感動して立ち上が「れ」なかった、に近い。あの時も、とても大事に1曲1曲を歌っていたが、「風に吹かれて」も「ライク・ア・ローリング・ストーン」も、「はげしい雨が降る」も「いつまでも若く」もやらなかった。あの時も、MCもメンバー紹介もなく、最後にボブが会場をじーっと見回すようにして退場して終わりだった。「トモダチ、アリガトー」なんて言ってくれなかった(笑)。
今、手元にコンサートパンフがある。これも20年ぶりだ。私が買いそびれていたか、売り切れていた可能性もあるが、97年も01年も10年も見かけなかった。前回、ブログで「オッサンはまた来る」と書いたものの、それがまさか4年後とは思っていなかった。なぜか今回はこれで最期感が高く、20年前とシンクロした。
Zepp
Osakaからの帰り道、最寄り駅とは反対方向に歩きだすと、人の気配はすっかりなくなってしまったが、春の夜風が気持ち良かった。思わず、今聴いてきたばかりの「風に吹かれて」を口ずさんでみた。
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コメント
こんにちは。
ディランの「せみの鳴く日」という歌がありますが、ラビオリの「せみ」という夏歌もオススメです!
投稿: ゆきお | 2015年8月19日 (水) 13時35分