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2013年5月 4日 (土)

『ウイングス・オーヴァー・アメリカ』リマスター記念 ポールのアルバムについて 第2回「ラム」

Ramこれとヴィーナス&マースは、思い入れありすぎで何から書いたらいいかわからない。

友人から借りた。私はNHKでTV「ジェームズ・ポール・マッカートニー」なんかを見た後からポールのアルバムを聞き始めたので、レッド・ローズ・スピードウェイぐらいまでのアルバムには必ず知っている曲が数曲あったので、このアルバムで言うと、“Uncle Albert”と“Heart Of The Country”は借りる前から知っていた。ある意味、聞きやすかった。

これは明らかに前作と違い、アルバムを作る気で作っている。いや、完成度とバリエーションが前作とはまったく違う。ウクレレ一本の曲からストリングスまで入っている。ロックからバラードから、この人の才能が余すところなくつぎ込まれている。捨て曲がない。
ニューヨークでのレコーディングはそんなに順調なものではなくて、あらためて自分がリーダーシップを取ってアルバムを作ることの困難さを当時出会ったジミー・ペイジに話している。

どの曲も手が掛かっている。オーバー・プロデュースぎりぎりかもしれないが、いろいろな仕掛けがしてあり、技術的に凄いなあと思う。ビートルズ並みだ。それでいて、以降のポールにあるような、やり過ぎたり、ラフ過ぎたりというムラっ気がみられない。

“The Back Seat Of My Car”を聴いても、この力作はゲット・バック・セッションでも取り上げられていて、当時のビートルズにやる気があればビートルズの作品として世に出ることもあったかもしれない曲だが(ジョンは嫌いだったろうなあ…)、結局前作でも発表しなかったところを見ると、マッカートニーというアルバムの経緯や、この曲をポールが大切に仕上げようとしたことなど、いろいろ想像が広がって面白い。

“Dear Boy”のコーラスの重ね方やボーカルのエフェクト、ピアノ、ドラムス、キーボード、ギターの音の入れ方。最後のピアノのミストーンみたいなものまで計算されているように聞こえる。元ネタはあるんだろうけど、こういう試みはビートルズ時代に案外ない。
このアルバムのクレジットが唯一ポール&リンダ・マッカートニーとなっていて、リンダの下手なりのコーラスがこの曲や“Uncle Albert”ではビートルズではなかったテイストを醸し出しているが、なによりポールも久しぶりに「歌って」いる。各曲微妙だが、それぞれボーカルを変えているようにも思う。
リンダの故郷のニューヨークでレコーディングする前に、相当アイデアを練って、準備して臨んだのではないだろうか。ニューヨークのスタジオでゲストニュージシャンやらオーケストラやら、お金もかかっている。どこかで本人も言っていた気がするが、本当の意味での彼のデビューアルバムなのかもしれない。

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