『ウイングス・オーヴァー・アメリカ』リマスター記念 ポールのアルバムについて 第7回「ウィングス・アット・ザ・スピード・オブ・サウンド」
日本盤よりも1ヶ月以上前に輸入盤が出回って、バンド・オン・ザ・ラン、ヴィーナス・アンド・マースと来て、ニュー・アルバムが悪いわけがないとの確信のもと、 待ちきれずに買った。
前作に較べると、インスタントな感じは否めない。本人もドメスティック・アンド・スピード・オブ・サウンドだと言っていた。バンド・オン・ザ・ランの頃に較べれば、ずいぶんポールも肩から力が抜けている。聴くほうも、力を抜いて聴けるが、その分、またまたポールの癖が見え隠れする。
前作がライヴを意識して作ったアルバムであったことを考えると、このアルバムはその反動がうかがえる。ライヴで取り上げている曲調、前作で取り上げているような曲調や手法は重複していないように思えるが、これはある意味新生ウィングスの方向性、正確にはポールがウィングスでやろうとしている方向性がはじめて現れており、次作や次々作に繋がっている。
“Let 'Em In ”“The Note You Never Wrote”と、なかなかいい流れでくる。“Silly Love Songs”も力作で、ほかの曲も力を抜いて聴けるとなれば、これで及第点だろう…。しかし。
前作のところで“Medicine Jar”を入れた試みを散々持ち上げたが、今回、“Cook Of The House”“ Must Do Something About It ”でその試みは失敗している。特に後者は、次の“San Ferry Anne”を潰している。“Time To Hide ”から繋げれば自然だが、無理やり入れたためにこの後の2曲は疲れてしまう。これは入れるべきではなかった。
“San Ferry Anne”と“She's My Baby”は次のアルバムに入っていてしかるべき曲なので、よけいにそう思う。“ Warm And Beautiful ”なんてマッカートニーにでも、ワイルド・ライフにでも入っていたらいい曲。何となく、次作でまたバンドが分解する予兆が現れている。たぶん、ワン・ハンド・クラッピングの頃のノリはなくなってきてたのだろう。
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