« やさしくなりたい | トップページ | 『ウイングス・オーヴァー・アメリカ』リマスター記念 ポールのアルバムについて 第1回「マッカートニー」 »

2012年7月21日 (土)

アレルギーの免責を求めよ

今月から、ツイッターを始めてみた。でも、基本的につぶやくことなんか、始める前にもなかったので、たぶん早々に撤退することになりそう。どうも自分には尺が足りないみたい。タイムラインを眺めていること自体は楽しいんだけどね。

家族にアレルギー体質の者がいると、これまで気にもとめなかったようなことに敏感になる。例えばミックスジュースに牛乳が入っているのかとか、カレーに小麦粉が入っているのか、とか。食品なら代わりに食べてみると多少はわかるし、最近はアレルギー表示が義務付けられているのでたいていは確認することができる。
驚いたのは市販薬で、風邪薬に卵や乳が使われていることがあるなんてまったく知らなかった。

こういった状況は、ここ10年でずいぶん様変わりして、デパートやスーパーはコンプライアンスからか、量り売りしているような惣菜でも商品札の辺りに小さい赤や黄色の丸いシールで特定原材料の表示がされている。

困るのは中途半端なコンプライアンスと、外食だ。
さっきの表示シールで言えば、どの料理もカラフルなシールがベタベタ貼られ、原材料から可能性があるものは全部、というか表示が義務付けられているものは、たいして検証もなく表示されているように思えるものもある。これはもう、アレルギーに対する“免責″だ。。「嫌なら食うな」という空気感バリバリだが、「嫌でも食えねえよ、バカヤロー!」と思っている。

エゴに受け取られるかもしれないが、卵を使わない玉子焼きを作って売れ、とか言っているのではない。あなたがたにとってアレルギーは、自分の店に責任のない食中毒みたいなもので、シールは免責かも知れないが、われわれに取っては、食べることができる目安なのだ。山ほど貼られたシールはもはや“目安″ではなく、「嫌なら食うな」メッセージなのだ。
ホラー映画の宣伝で、“心臓の弱い方は″の免責と異なるのは、われわれはあのシールを標としているのだ。

外食の場合、ホームページにアレルギー表示を行っているところも増えたが、人気店は、ほぼない。そんなときは、メールで問い合わせることになる。

「はじめまして。今度○○に行くことになり、貴店にぜひ、立ち寄らせていただきたいと思っているのですが、卵や乳製品にアレルギーを持っております。そちらさまの○○に、卵や乳製品はお使いになっておられますでしょうか。
たいへん不躾ではございますが、ご教示いただけましたら幸いです。」

以下は、この同じ内容の質問メールに対する回答例で、ピンとキリを掲載してみる。

「○○様

ご質問有り難うございます。
当店の○○についてですが、
乳製品、玉子を一部使用しております。また、その他のメニューに
ついても乳製品、玉子等を使用しております。
誠に申し訳ありませんが、アレルギーの事を事前にお知らせ頂いた
お客様に、乳製品や玉子が微量であっても使用している商品をお出
しする事は出来ません。

もし、万が一の事があっても当社でも責任を負いかねますので、ご理
解の程宜しくお願いいたします。
ご期待に添えられない回答となりましたが、宜しくお願いします。

楽しい○○旅行をお過ごし下さい。」

アレルギーのない方は、このメールのどこがおかしい?とお思いかもしれない。客からすれば、アレルギー症状が発症するリスクを回避し、店も責任を問われるリスクを回避するのだから、双方ともにベストの解決策だ、そうお思いだろうか。
われわれからすれば、また、今流行りの“めんどくさい″客扱いされてしまった、そう感じる。そんな店に難癖つけないで、とっととアレルギー表示のある店で食えよ、と言う人もいるかもしれない。

食べられないことは慣れっこで、もちろん上の店で食べるつもりはない(し食べられない)が、食べられないこととは別に、二重につらい思いをすることになることが、わかっていただけるだろうか。
「お知らせ頂いたお客様に、お出しする事は出来ません」というのはどういうことだろう。ホラー映画ですら、「お見せすることはできません」と言われることはないはずだが。

実はこのお店、○○料理の店であり、家族は○○にはアレルギーがなく、しかも、この店がメインで出している料理は、市販のものはいつも食しており、この店独自で加えている食材や調味料があれば、念のため確認したいとメールしたので、卵アレルギーなのに玉子焼き屋に食べられるものがあるかと尋ねたわけではない。対応してくれと言ったわけでもない。
「あなたには商品をお出しする事はできない」と言われたことがありますか。

上記は一例であるが、実はこの手の対応はこれまで何度かあり、病院の入院食ですら、こういった対応をされたこともある。
そうかと思うと、こちらが恐縮するぐらいの対応をしていただくこともある。

「○○様

お問い合わせありがとうございます。
○○と申します。メールの内容ですが、○○の味付けに関しては下味程度に塩、こしょうをしておりますが、バターなどの乳製品は使用しておりません。ただ、他の料理には多数使用しています。

例えば、
<○○をご注文された場合>
スープ・・・牛乳を使用
サラダ・・・マヨネーズに手を加えて使用していますので、卵を使用。(ドレッシング抜きでの注文は可能)

ステーキ・・・豚カツ(衣に卵使用)を揚げる油と同じ油を仕上げに少し振りかけて使う場合があり、その油が鉄板にしみている可能性があり
 付け合わせ玉ねぎ・・・アレルギーに関わるものはなし
 付け合わせポテト・・・豚カツ(衣に卵使用)を揚げる油と同じ油で揚げたもの

ライス・・・アレルギーに関わるものはなし
もしくはパン・・・卵、バターを使用

と、なります。
その他にも、
(略)

お客様のご希望により、省くことができる料理もあれば、できない料理もあります。
注文される料理が事前にお決まりでしたら、このメールのやり取りで返事は可能ですが、来店してから料理を決める場合はその時に、出来る限り対応させていただきます。

アレルギーをお持ちのお子様が最近は多く、こちら側も今後の対応方法をしっかりしていかなければならないと同時に、親御さんの気苦労を少しでも和らげることができたら、、、と思います。避けることのできない食事でのお店選びは大変でしょうが、楽しい思い出が作れるように願っております。

ぜひ、○○を楽しんでいってください。」

涙なくしては読めない。さっきの返信との振り幅は極端だけれど、これまで中間はほぼなく、先の対応か、あるいはこちらに近い対応のどちらかである。
飲食店がすべからくこうあるべきだ、なんて思ってはいない。めんどくさいことに違いはない。
結局何が違うのかと言うと、われわれが必死で食べられるものを探していることをわかろうとしてくれる。気持ちを汲んで、出来る限りのことを一緒に一生懸命探してくれる。結果食べられるか食べられないかは仕方がないのだけれど、本当に頭が下がる。

いつも、木で鼻をくくったような返信をいただくと、礼を述べたあと、今後私のように、あなたのお店でぜひ食事がしたいと思うアレルギーの人がまたいるかもしれないことを、ぜひ覚えておいて欲しいと伝えるのだが、たいがいそういうメールには返信もないので、今回ブログに両方を紹介してみた。ひょっとしたら飲食業に携わる方がご覧になって、何かお考えいただくこともあるかもしれない。そのほうが、特定の店とやりとりすることよりも有意義に思える(まあ誰も見てないけど)。

結局振り幅の大きさ、中間がないというのは、人さまざまな捕らえ方があるのではなくて、ただ無理解が横たわっていることに過ぎないからだと思う。それでもなお、「じゃあ、理解してくれる店で食事すれば済むことじゃん」と言われるのだろうか。

私が書きたかったのは、アレルギーのことよりも、「あなたの店で食べたい」と言われることと、「お出しする事は出来ません」と言われることをどう受け止めるか、ということだったのだけれど、子供に算数を教えていたら、こんなタイトルになってしまった。

|

« やさしくなりたい | トップページ | 『ウイングス・オーヴァー・アメリカ』リマスター記念 ポールのアルバムについて 第1回「マッカートニー」 »

まったく関係ない話」カテゴリの記事

コメント

この記事へのコメントは終了しました。

トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: アレルギーの免責を求めよ:

« やさしくなりたい | トップページ | 『ウイングス・オーヴァー・アメリカ』リマスター記念 ポールのアルバムについて 第1回「マッカートニー」 »