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2009年11月

2009年11月18日 (水)

イエロー・マジカル・サブマリン

「コンプリート・レコーディング・セッション」によれば、67年の春にサージェント・ペパーズのレコーディングが終了するやいなや、マジカル・ミステリー・ツアーと、イエロー・サブマリンのアニメ化プロジェクトがほぼ同時に決定していたそうである。ツアーをやめて、何をやるのかという議論がなされただろうし、持ち込まれた企画も多かったのだろう。アップルの計画も同時期と推測される。(確かサージェントの裏ジャケにはリンゴマークが入っていたと思う。)

レコーディングを時系列に追うと、“Only A Northern Song″以外、マジカルとイエロー・サブマリン収録曲は錯綜してレコーディングされている。果たして、この二つのプロジェクトにおいて、ビートルズは「これはマジカル、これはアニメ」と峻別していたのだろうか。おおいに疑問が残るところである。

まずマジカルについては、「一週間で撮影して、一週間でレコーディングして、一週間で編集する」のが確かポールの構想だった(実際には到底不可能だった)。構想どおりだったなら、やはりマジカルにはこれまでのビートルズとは異なるレコーディングのアプローチ…“HELP!″でも少しは試みられたが…映像にあった音楽制作が必要であった。
では、なぜフル・アルバムの制作を行わなかったのか。“A HARD DAY'S NIGHT″でも“HELP!″でも、A面サントラでB面オリジナル(キャピトルはオリジナルなし)であったし、曲が足りなかったわけでもなかったのだが、シングルLP(正確にはシングル2枚組)の発売を決めている。
また、69年のミーティングの際、ジョンからの申し入れとして「マジカルの時のように、1曲しか(ウォルラス)出来ていないのにリリースをするのはやめてほしい」と言っている。ただし、同時期“All You Need Is Love″と“Baby You're A Rich Man″をカップリングで出していることを鑑みると、釈然としない感じもある。

エプスタインも亡くなったことも相俟って、金と時間が無駄にかかったこの企画自体、彼らの想像力を掻き立たせるものではなくなっていたのかも知れない。しかし、フィルムの放送と同時期にリリースしなければいけない事情があれば、目指すものはアルバムの完成ではなく、シングルであれなんであれ、リリースが必要だったのだろう。

僅か1年後で、同じ事情はイエロー・サブマリンにもあったと思う。しかしこっちの方がよりビートルズの関わりが低かったにも関わらず、フル・アルバムであったのは、どうしてなのだろうか。(あんまりだということで、69年春にはシングルLPが一旦は企画されている)

マジカルの6曲には、いずれもそこはかとなく“ミステリー″な、感じがする。こじつけ臭いが、1時間のテレビ番組で、またこういうテーマで制作できるのは6曲が限度だったのではないだろうか。そうすると、イエロー楽曲がボツ曲、というのもあながち出鱈目ではないように思える。

仮に…この中途半端な2枚で一枚のビートルズのアルバムを作ったとしたらどうだろう。そう思って並び替えると、これが結構イイのだ。

ペパーからホワイト・アルバムを繋ぐ音。ペパーほどの緊張はなく、ホワイトほど剥き出しではない。どことなくのどかで、ペパーからより、リボルバーからの延長線上にある音を感じる。エゴがぶつかり合う前の、最後のビートルズの音が、そこにある。

Magical Mystery Tour
Baby You're A Rich Man
All Together Now
You Know My Name (Look Up The Number)
All You Need Is Love
Your Mother Should Know
I Am The Walrus
It's All Too Much
Blue Jay Way
Flying
The Fool On The Hill
【Hello Goodbye】
【Christmas Time (Is Here Again)】
【Lady Madonna】
Across the Universe(bird version)
The Inner Light
Hey Bulldog

これはまんま67年4月25日から68年2月11日までの単純な録音順だが、なかなか良くできている…
また、All You Need Is LoveとYour Mother Should Knowが世界中継シングルを争ったこと、Hey BulldogがLady Madonnaに触発されていることを裏付けている、とも言える。Baby You're A Rich Man、All Together Now、You Know My Nameのお祭り三連チャンも面白い。画像は68年1月25日撮影だから、Lady Madonnaの前。

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2009年11月15日 (日)

4.5人目のビートルズ

モノ・ミックスについて、ジョージ・マーティンやジェフ・エマリックの本等を読み返していて、あらためて気がついたのだけれど、私は三十数年“レコーディング・プロデューサー″という職業を何ら理解していなかった。
せいぜい音楽的なアドバイスをしていた人、というイメージだったが、れっきとしたEMIの社員で、「売れるレコード」作りを会社から厳命されており、ビートルズを発掘、さらにある時点からはビートルズをクライアントとするプロデューサーだった。だからこそツアーにも帯同したり、ゲット・バック・セッションにも居合わせたりしたのだろう。

このことを理解して伝記を読むと、今更ながら彼の果たした役割は本当に大きい。
まず、アンソロジーを聞けばわかるが、ピート・ベストがいた頃のビートルズと、リンゴ・スター加入以降では、音楽的安定(?)が全く異なっている。これだけでも彼の判断は的確であり、デッカやハンブルク・テープ、初期のBBCなどを聞くと、「彼の手が入らない場合のビートルズ」というのがどんなもんんだったか、わかる。

彼は唯一の自著で、初期は彼らと人間的な関わりが深かったが、後期はより私の音楽をビートルズが取り込むのと反比例して、人間的な関わりが希薄になった、といったことを書いている。なかなか示唆に富んだ一節で、つまり初期は彼らは自分のアドバイスをすんなりは受け入れはしなかったものの人間関係-つまり彼に対する尊敬や、ビートルズに対する愛情-があったが、後期は自分のアレンジが必要な時だけ彼らは自分を頼ってきた、といったことだったようである。

まあそれにしても、“RUBBER SOUL″あたりまでの彼の貢献は凄いと思う。いち早く彼らの音楽的魅力を見抜き、また彼らが頭の中で描いている音のイメージを把握して斬新なアイデアを提供するといった仕事は彼のオリジナルであり、間違いなくある時期までは「5人目のビートルズ」に違いない。

ある時期まで、と書いたが仕方ないのだ。ある時期に至る過程で彼らの周辺は誰もが「5人目のビートルズ」らしく振る舞い始める反面、ビートルズだって自分たちが「4人目以内のビートルズ」を保つのが困難となり、例えばリンゴ・スターだって、ある時期からは音楽的に「4人目のビートルズ」だったかどうかは、自分自身でもわからなくなってしまったのではないだろうか。

ジョージ・マーティンも自著で、ビートルズはジョンとポールという稀有な才能を抱えたバンドであり、ジョージ(ハリソン)とリンゴ、そして自分は二人に匹敵する卓越した才能を持っていたわけではなかったが、サッカーに例えるならば彼ら二人のストライカーがシュートを決めることができるように貢献した、といったことを書いていた。

本当に、彼なしにビートルズの音楽は成立しなかったのだと、リマスター発表であらためて認識した。でもジョージ、サッカー・チームに例えるんならできればそこに、エプスタインやエマリック、ノーマン・スミスとかも加えてあげて欲しかったな。


エマリックもいます。

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2009年11月14日 (土)

アンオフィシャルなオフィシャル解説

リマスター音源検証本が出ていないか、と本屋に行く度に捜すけれど、どうも琴線に触れるものがない。そんななか、遂に「これだ!」というのが出た。ビートレッグの12月号だ。

113

まあ、マニア向きと言えばマニア向き、というかブート・ファン向きではある。もともとブート音源の細かい比較をやってる月刊誌だけに、こういう企画はおてのものなのだろう。
ブート比較雑誌がオフィシャルの新盤と旧盤の特集をやる、というのもオカシイが、そこはしっかりモノ、オリジナル・ステレオ、レギュラー・ステレオ(87年版)の比較に加えて、ブートにももちろん言及している(笑)。
さらにミニ・ドキュメンタリーの音源、同時に発売されたゲーム音源、果てドクター・エベッツの引退声明(!)まで約70頁に亘って特集している。

リマスター音源として取り上げられているのは110曲ではあるが、どれもなぜそのバージョンが良いか明白で、痒いところに手が届いている。ミニ・ドキュメンタリーの音源検証は胸のつかえが取れる思いだし、今後も他誌では取り上げられないだろう。“買い″である。

(惜しむらくは、ただ一箇所、“Maxwell's Silver Hammer″のところで、「リンゴの曲だから」とあるのは、“Octopus’s Garden”の取り違いであり、痛恨のミスである。)


頭に1,2,3,…というジョンのカウントインが聞こえる。もちろん初登場。

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ええっ!ええっ!

9october

(左から)Michael Giles, Peter Sinfield, Bill Bruford, David Cross, Robert Fripp,John Wetton and Mel Collinsだってさ。演奏もしてくれい。CDもだしてくれい。(宮殿40周年で、10月9日)

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2009年11月 9日 (月)

ええっ!

いや驚きました。もっと早く出せよな、まったく。

Apple2

なんかエラーが出たら家電並みに1年以内無償修理、とか対応していただけるのでしょうか。だいたいFLACとMP3というのもよくわからないし‥。これが数年前にセキュアCDを導入したメーカーとは思えないが、やはりビートルズ頼みの業界なのでしょうか。

http://www.thebeatles-store.jp/products/detail.php?product_id=554

でも欲しい(笑)。

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