イエロー・マジカル・サブマリン
「コンプリート・レコーディング・セッション」によれば、67年の春にサージェント・ペパーズのレコーディングが終了するやいなや、マジカル・ミステリー・ツアーと、イエロー・サブマリンのアニメ化プロジェクトがほぼ同時に決定していたそうである。ツアーをやめて、何をやるのかという議論がなされただろうし、持ち込まれた企画も多かったのだろう。アップルの計画も同時期と推測される。(確かサージェントの裏ジャケにはリンゴマークが入っていたと思う。)
レコーディングを時系列に追うと、“Only A Northern Song″以外、マジカルとイエロー・サブマリン収録曲は錯綜してレコーディングされている。果たして、この二つのプロジェクトにおいて、ビートルズは「これはマジカル、これはアニメ」と峻別していたのだろうか。おおいに疑問が残るところである。
まずマジカルについては、「一週間で撮影して、一週間でレコーディングして、一週間で編集する」のが確かポールの構想だった(実際には到底不可能だった)。構想どおりだったなら、やはりマジカルにはこれまでのビートルズとは異なるレコーディングのアプローチ…“HELP!″でも少しは試みられたが…映像にあった音楽制作が必要であった。
では、なぜフル・アルバムの制作を行わなかったのか。“A HARD DAY'S NIGHT″でも“HELP!″でも、A面サントラでB面オリジナル(キャピトルはオリジナルなし)であったし、曲が足りなかったわけでもなかったのだが、シングルLP(正確にはシングル2枚組)の発売を決めている。
また、69年のミーティングの際、ジョンからの申し入れとして「マジカルの時のように、1曲しか(ウォルラス)出来ていないのにリリースをするのはやめてほしい」と言っている。ただし、同時期“All You Need Is Love″と“Baby You're A Rich Man″をカップリングで出していることを鑑みると、釈然としない感じもある。
エプスタインも亡くなったことも相俟って、金と時間が無駄にかかったこの企画自体、彼らの想像力を掻き立たせるものではなくなっていたのかも知れない。しかし、フィルムの放送と同時期にリリースしなければいけない事情があれば、目指すものはアルバムの完成ではなく、シングルであれなんであれ、リリースが必要だったのだろう。
僅か1年後で、同じ事情はイエロー・サブマリンにもあったと思う。しかしこっちの方がよりビートルズの関わりが低かったにも関わらず、フル・アルバムであったのは、どうしてなのだろうか。(あんまりだということで、69年春にはシングルLPが一旦は企画されている)
マジカルの6曲には、いずれもそこはかとなく“ミステリー″な、感じがする。こじつけ臭いが、1時間のテレビ番組で、またこういうテーマで制作できるのは6曲が限度だったのではないだろうか。そうすると、イエロー楽曲がボツ曲、というのもあながち出鱈目ではないように思える。
仮に…この中途半端な2枚で一枚のビートルズのアルバムを作ったとしたらどうだろう。そう思って並び替えると、これが結構イイのだ。
ペパーからホワイト・アルバムを繋ぐ音。ペパーほどの緊張はなく、ホワイトほど剥き出しではない。どことなくのどかで、ペパーからより、リボルバーからの延長線上にある音を感じる。エゴがぶつかり合う前の、最後のビートルズの音が、そこにある。
Magical Mystery Tour
Baby You're A Rich Man
All Together Now
You Know My Name (Look Up The Number)
All You Need Is Love
Your Mother Should Know
I Am The Walrus
It's All Too Much
Blue Jay Way
Flying
The Fool On The Hill
【Hello Goodbye】
【Christmas Time (Is Here Again)】
【Lady Madonna】
Across the Universe(bird version)
The Inner Light
Hey Bulldog
これはまんま67年4月25日から68年2月11日までの単純な録音順だが、なかなか良くできている…
また、All You Need Is LoveとYour Mother Should Knowが世界中継シングルを争ったこと、Hey BulldogがLady Madonnaに触発されていることを裏付けている、とも言える。Baby You're A Rich Man、All Together Now、You Know My Nameのお祭り三連チャンも面白い。画像は68年1月25日撮影だから、Lady Madonnaの前。
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