あなたがここにいてほしい
露鵬のネタを書いたら、なんとリック・ライトが亡くなってしまった。どうぞ、成仏なさってください。南無阿弥陀仏。
ピンク・フロイドについては、書きたいことがいっぱいある。しかしリックについては…正直、よくわからない。浮遊感が好き、という人もいるが、フロイドが好き、とどう違うのか。
ある時期、暇にあかしてロジャーの“IN THE FRESH″と“P・U・L・S・E″、ついでに“THE WALL LIVE″を聞いて、どれがフロイドか、なんて考えていた(バカ)。
2005年、誰もが想像しなかったLIVE8の再結成を見て、ああ、やっぱりこれがフロイドなのだ、といたく感心した。ロジャーのソロや、ギルモア・フロイドに感じていたことが氷解した。
私がロジャーを好きなのは、ユーモアのセンスがあること。彼のどのアルバムも、最後にはほんの少し希望を提示している。
ギルモアは、クラプトンに憧れていたらしい。だからロジャーがツアーにクラプトンを起用したときは、ギルモアは本当に傷ついたらしい。
しかし私が、ギルモアをクラプトン以上に評価するのは、“HAVE A CIGAR?″や“SHEEP″、“ANOTHER BRICK IN THE WALL PARTⅡ″“YOUNG LUST″“NOT NOW JOHN″のような一転攻撃的なギターが弾けることだ。そういうギタリストを、私は他にジミー・ペイジしか知らない。
「鬱」は素晴らしく、その世界は紛れも無いフロイド・ワールドだったが、ロジャーがいつも提示していた「希望」は見当たらなかった。だからギター・ソロが出口となっていた“LEARNING TO FLY″と“ON THE TURNING WAY″しか聴かなくなってしまった。
ちなみに「対」に至っては、“TAKE IT BACK″のギターしか聴かなかった。ギルモアのソロ・アルバムとどう違うのか?
ワサビが効いていないのだ。LIVE8の“WISH YOU WERE HERE″I“COMFORTABLY NUMB″を聴けばわかる。決して上手いとは言えないロジャーのヴォーカルは震え、語りかける。それはシリアスでありながらどこかユーモラスだ。その背後に卓越した演奏が奏でられ、いよいよギルモアのギター(場合によりリック・ライトやホーン・セクション)が突き抜ける…のがフロイドだ、と思うんだがな、私は。
ちなみにニック・メイソンに触れなかったが、とても個性的なロック・ドラマーで、チャーリー・ワッツを彷彿とさせるようなテイストを感じるし、彼が叩くことでフロイドがを少人数ロック・バンド然とするところがいい。
それにしても、「エコーズ〜啓示」(ベスト)は素晴らしい。フロイドの各時代の曲が違和感なく並んでいるが、のみならずこれがオリジナル・アルバムのようだ。
シドに敬意を払い、ロジャーの「ファイナル・カット」や「虎」に敬意を払い、「鬱」や「対」にも敬意を払っている。コンプリート・ベストである。落涙を禁じ得ない。
ちなみにカミング・アウトしておくが、私が最も愛しているアルバムは、「ファイナル・カット」です。
…こんな私に故人を論評することなんて、できないですよね。
風雨の中、鬼と化すギルモア。ベスト・アクトの一つ、89年ネブワース、コンフォータブリー・ナム。
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コメント
「ファイナル・カット」に毒(?)されたら、もう簡単には救われません。あれは恐ろしいアルバムです。あそこまで自己のトラウマを語り、当時の若者に国家的愛国心を煽り立て英国に栄光をもたらしたと喝采された自国の首相サッチャーを叩(たた)き、更に核戦争の脅威を背負って、自己のバンド・メンバーとも戦って作り上げた男の魂の作品のだから。囁きと叫びと時として鳴り渡る大音響、そして哀しくも訴えるギルモアのギター。これはかって類を見ないロック史における傑作だと私は断言できる。これを愛するという貴君に心から敬意を表します。
投稿: *floyd(風呂井戸) | 2008年10月13日 (月) 21時29分