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2008年8月

2008年8月31日 (日)

PERFUMEでっす

どうして“トランス”と言わないのだろう?
“テクノ”という言い方も、メンバーの語彙が不足しているだけだと中田ヤスタカが言っているし。何か90年初期に流行ったTKOリミックスみたいな感じもあるし。
これは受けるな。10代から20代の女性まで受けるんじゃないか。あーちゃんのキャラがいい。他のメンバーが出なくていいし、前に出ようとして媚びる感があると、女性視聴者は敏感だ。
いい楽曲を出し続けて欲しい。いくらでも聞ける。

驚いたのは、同じアミューズの看板サザンが新曲の“I AM YOUR SINGER
”でボコーダーを使っている。なんか笑えてしまう。
この間のMステの前半、あれは口パクなんでしょうかね?それとも半々なんでしょうかね?いつもよりボコーダーのかかりが薄かったのか、それとも生音のミックスが大きすぎたのか、彼女らの歌がよく聞こえました。
こういうのを“ギリモザ”っていうんでしょうか、なんか彼女のスッピンを見た時のような眩しさが‥(笑)

たぶん削除されているかな?

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2008年8月29日 (金)

女性の落語家

先日TVを見ていたら春風亭小朝が出ていて、女性の落語家が成立しないのは、男の馬鹿を語れないからだ、というようなことを言っていた。男は真剣に風呂をのぞこうとして大怪我をしたりする話を笑いにするが、女はそういうことをしないし、思いつめて相手を刺したりする。

私の誤解に基づくものかもしれないが、ちょっと小朝氏にはがっかりした。こんなに10代のころから天才と言われた人が、言うようなことなのか?と思った。いや待てよ、この人はそれだけに凄い毒舌を吐くことがあるから、今回も裏を返せば女性落語家を励まそうとしているのか、などとも考えた。

「男の馬鹿を語れない」、というのはなんだかもっともらしい解釈ではあるが、こんな第三者的な物言いはやめて欲しい。落語界の名実ともに大御所なんだから、もっと批判をするべきである。男性が男性社会の中で男性に受ける話を作り、それが後々引き継がれてきたことを、「馬鹿が可愛いのは男だけ」などと括って欲しくない。女性落語家は、女性だからわかる女性がもっとも腹から笑える噺を作り、それは例えば男がクスリとしなくても、女性にしかできない噺を女性に向けてやるべきだとなぜ言わないのだろう?

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2008年8月27日 (水)

モノ思う、夏の終わりに

White

最近、ホワイト・アルバムのモノを聞いています。
私はもともと擬似でも何でも絶対ステレオ派で、CD化に際して初期4枚がモノのみとなった日にゃ悲しみに暮れました。(キャピトル・シリーズが出た時には、テイク違いよりもステレオ化に歓喜したものでした。)

そんな私がモノに興味を持ったのも、実はキャピトル・シリーズで、ステレオに遜色ない迫力があり、これは捨て置けないぞ思ったワケであります。
で、モノ・ホワイトの感想を書くのではなく、イヤゴトを少し(笑)。

マニアの方には恐縮ですが、私個人はモノの推奨理由としてよく言われる「ビートルズはモノミックスを標準と考えていたので、モノを聴くべき」というのは、些か教条主義的じゃないか、と思っています。そんなこと言ったらブートなんてまったく本人たちが認めたものではないけど、彼らの音楽の素晴らしさを伝えているものはあるし、「標準」とするには何秒長い、短いとか、咳ばらいがどうとか、正直あまり曲の持つ力を変えるようなことでもないのかな?と思います。
あと、「モノのほうが音に集中でき、いろいろな音を聞くことができる」 という声もあり、確かにその通りなのですが、別にそれだけならステレオをモノで聞けばいいし、何だったら片チャンネルずつ聴けば、それこそいろんな音が聞けます。゛ABBEY ROAD゜を聴き始めた頃、片チャンで聞いてI WANT YOUやBATHROOMWINDOWでジョンやポールのフェイク・ボーカルが聞こえた時にはすごく興奮したことを覚えています。

それでも、私がモノ否定派ではないのは、確かにミックスで曲の印象が変わる曲があるからなのです。要は、「ビートルズが認めたかどうか」を云々することに釈然としないので、中にはミュージシャンでありながら「ビートルズはモノで聞くべきだ」とか言う人がいるので、そういうのは文字どおり「耳」を疑います。
それに、そんなにマーティン氏の役割を侮ってはいけない、とも思うのです。

大昔、我が家には譲り受けた60年代の真空管ハイ・ファイ・ステレオがありました。それは今思えば素晴らしいもので、スピーカーが前面に2つ、側面と底面に1つずつの計5つがあり、簡易のグライコまで付いていました。
ところが、数年後に私がバラバラにしたところ、なんとモノ・アンブだったことがわかったのでした。

当時、そんなふうにステレオ・ミックスをモノ・プレイヤーで聞いた人も結構いたのではないんでしょうか?
そう考えると、最初からモノ・ミックスしかないのは別として、ヘルプ!以降のモノ・ミックスにNGテイクみたいなのが多い、というのも頷けます。つまり、これは一つの仮説ですが、ビートルズがモノ・ミックスだけに同席したのは、モノ・バランスだけ確認すればあとはマーティン氏が「モノ再生した際にもバランスが保てるような」ステレオ・ミックスを作ってくれたから、といったことはないのでしょうか?としたら、正確には「ビートルズはモノ・バランスに関わった」ので、「モノ・テイクのみがビートルズの認めた音」と言うとミスリードするんじゃないか、と思います。

もっとも最近のアーティストは、5.1CHのミックスや、SHCDのマスタリングには立ち会っているのかも知れませんが…。

最後に゛認める゜話について、ポールの言葉を書きます。
゛NAkED゜リリース時に、遺恨のWINDING ROADはこれを機に差し替えてはどうか、とインタビュアーに聞かれて、ポールは
「でも、他の3人が今でも元のテイクを支持するなら、しかたないんだよ。ビートルズは4人だからね」(08.08)

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2008年8月 8日 (金)

8月8日

8月8日11時35分、このアルバムのジャケットが撮影された。

1986年の2月25日火曜日朝11時15分、私は念願のアビイ・ロードに立った。
あの写真から約16年と7カ月、私がアビイ・ロードを聴いてから11年と6カ月、すでにジョン・レノンは5年ほど前にこの世を去っていた。
たまたま宿泊したホテルがCLEARANDON COURTだったので、よくみなさんが書いておられるようにSt.John's Wood駅からではなく、逆方向から歩いていった(つまり南西方向から)。非常にわかりやすかったのだけれど、最後、地図上ではすぐそばなのにそれらしい風景が出てこないな…と思っていると、通りが右方向に大きく旋回して、曲がってすぐのところがあの、ジャケットショットの位置だった。

Stjjohnswood_3

写真には映っていないが、当時確かゼブラゾーンはなくなっていたと思う。このすぐ手前に、地名表示板があった。

Nw8_5

14年後、2000年に岩上さんがおいでになった写真も掲載 させていただいたが、私が行った時は2回とも人気が 少なく、壁の落書きも大してなかった。岩上さんの写真にはピカチュウまで…。
Rakugaki_4

それにしても、何とも“聖地”であった。一番上の写真の、左奥に見えるバスストップにも永らく座っていた。真夏のジャケットとは違い、樹木は裸んぼうである。確か少し小雨も降った記憶があるので、路面も濡れてはいた。非常に寒い日ではあったが、ここは私が憧れに憧れ続けた場所に間違いはなかった。

Stjohnswood2_3

ご参考までに、2月25日にビートルズが使用したのは、69年に“SOMETHING”“OLD BROWN SHOE”の第1テイクをジョージが一人で録音したのと、64年に“YOU CAN'T DO THAT”“AND I LOVE HER”“I SHOULD HAVE KNOWN BETTER”のレコーディング、63年にアルバム“PLEASE PLEASE ME”のマスタリングであるから、厳密には64年だけということになるかもしれない。

次に建物であるが、かなり長い時間横から縦から斜めから眺めていた。今後一生の間に何度も来れる場所ではない、という想いも強かった(翌朝もう一度行ったが)。
少しびっくりしたのは、通りに面している場所は白く美しく保たれているが、奥の方は非常に古く、かつ大きかった(写真には映ってませんが…)。まるで2つの建物を1つにしたような建物だった。
Emi_1_3

あれから、さらにまた22年と6カ月が経った。つまりあのジャケットを撮ってから私がはじめて行ったときまでの期間よりも、時間が経ってしまったわけだ。
そろそろまた行きたいものだが、岩上さんにうかがっても、よそのサイトを見ても、いつも人がいて、落書きも多いとのことである。99年8月8日のイベントの様子を見たが、あれは壮観だった。まるでデモ行進だった。世の中には渡りたい人が多いのだなあ、と感服した。

で、聖地にWebカメラが設置された(^^;;;;
うーん、やはり聖地である。素晴らしい。できればショットは南西側からにして欲しかったが、これで「行きたい!行きたい!」病が軽減する。
私がはじめて行ったころ、例えばスタジオの場所なども、私の時代ではビートルズ事典(香月利一編、立風書房、74年)に掲載されたのがはじめてだったと思うし、実際86年に行ったときも同書を立ち読みで場所を押さえたのであった。
簡単に行けるようになったのはいわゆるエージェントによる「ビートルズツアー」などが出回ったっことに加え、インターネットが普及したことにもよるものだろうか。そういった経緯で俗化していく過程にしても、アビイ・ロードは高野山なのであった。

(今年はオリンピックの開会式とカブってやや少ないか?)
Crossing

今年は、69年と同じ曜日周りだ。あのジャケットに写っているビートルズ。すでに月曜にBECAUSEをレコーディングを終了させ、4人としての仕事は終わっていた。全曲が揃って、それぞれの自曲に手直しを入れているビートルズである。明日からは週末。ほとんど終わって、ジャケットを撮っていたのだった。(08.08)

(最後のおふざけ)
Road

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I WANT YOU (SHE' SO HEAVEY)

この曲は、「強烈」であり、「鮮烈」である。
それはいつも語られるエンディングのみならず、たった3節しかない歌詞のメッセージ性、ジョンの素のヴォーカル、絶叫、リンゴのヘヴィなドラムス、ポールのあらん限りのコーラス,ジョージのギター・ワークはまさにビートルズの断末魔だ。
“YER BLUES”“DON'T LET ME DOWN”と進化してきたジョンのベクトルの端である。そして、この曲こそこのアルバムの中で“HUGE MELODY”に対抗するビートルズ・ソングである。エリック・クラプトンや、アラン・ホワイトや、クラウス・ヴーアマンでは完成しない、ビートルズ・ソングである。
その点で、私はこの曲を“COME TOGETHER”以上に買っている。

“BECAUSE”との関係

最初に“ABBEY ROAD”を聴いた時のことを思い出して欲しい。
“I WANT YOU”と“BECAUSE”のテーマ・リフが似ているとは思いませんでしたか?

2つの曲は3連と4連でまるで違う、という方もあるだろうし、飛躍に過ぎるとお叱りを受けるかもしれない。まるで岩肌や木葉が人の顔にも見える、と言うようなものだと一笑に付されるかもしれない。


“I WANT YOU”のテーマ・リフとなっているアルペジオは、“JULIA”や“LOOK AT ME”なんかで聞けるジョンがよく弾くアルペジオでだが、このリフは最初から演奏されていたわけではないようである。1月28日(らしい)テイクでは、ジョン一人でエレキの弾き語り(!)となっているが、テーマ・リフはない。翌1月29日、または2月22日のレコーディングで登場したのかどうかはわからない。

ちなみに、“GET BACK SESSION”ではアニマルズの“THE HOUSE OF THE RISING SUN”を演奏しており、ジョンがヴォーカルを取っている。このテイクは、アルペジオのフレーズのみならず、極めて“I WANT YOU”を連想させるものだ。

しかし最近のYOU TUBEは何でもある‥

お話戻って、彼はこの曲のアレンジを試行錯誤するなか、生まれたもう一つの曲が、“BECAUSE”なのかもしれない。“LOVE”の下書き、とも云える歌詞を載せて…。
それをベートーベンになぞらえることは、コルトレーンが“BALLADS”を完成させた際に、「マウスピースがたまたまなかったので、ブローの少ないバラードを録音した」と語ったような、一種のジョークではないのか?


リード・ギター、ジョン・レノン

この曲のギターには相当ジョージと時間をかけたようである。そういったギタリスト同士の緊張感の中、すばらしいものに仕上がっていると思う。
ヴォーカル・ユニゾンのギター、カッティング、テーマ・リフそのあと!ギターのトグル・スィッチをリアからミドル(ミドルからフロント?)に切り換える音が2度も入っている…。

そしてこの、ソロに入るタイミング。まるで密林を大蛇がのたうつような、ゾクゾクする感じ…。

このあたり、どうもジミ・ヘンドリックスあたりの影響を感じる。ジョンはエレクトリック・レディランドを聴いてた?現実にこのセッションを終えると、すぐにポールを除く3人はワイト島に飛んでフェスティバルを見に行っている。

このソロ、レスポールの音っぽいのでジョージが弾いている説が有力である。
しかし、ジョンが映画のアウトテイク・フィルムでヴォーカル・ユニゾンのギターを弾いているシーンがあること、また、ジョージが弾くのならもっとテクニカルなフレーズだと思えること、どちらかと言えば“GET BACK”のソロに近いこと…を理由に、ジョンのリード説も捨て難い。どちらかと言うと、ジョンが弾いていると“信じたい”。

ちなみに、ポールの曲でジョンがギター・ソロを弾く、という意味では“GET BACK”は異例、とも言えるが、ブートなどを聴くと、リハの初期はジョージが結構テクニカルなソロを弾いているように聞こえる。
しかし、映画で見られるポールとジョージの口論(“TWO OF US”の演奏についてのようである)の後、ポールの曲でソロを弾くことにわだかまりが出来、それで仲をとってジョンが弾いたのではないか、と思うフシもある。

また、異例の1曲に、“HONEY PIE”がある。これも最近まで知らなかったが、ジョージがこのジョンのプレイを絶賛している。
“MAXWELL'S~”の項ではこき下ろしたが、あらためてこの曲を聴くと、これが良いのだ。
(ただ、モノ・テイクはちょっとミスが目立つが‥)

誰かの声

ジョンの絶叫のあと、よく聴くと誰かの声が入っている。
マーク・ルウィソンによれば、“I WANT YOU”のこの声は、「コントロール・ルームから不満を表すこもった声」とされていたが、トライデントで2月22日に録音されたテープを聞いて、メンバーの誰かがマイクなしに喋った声であることが判明した、としている。そうか。英語人はこういう喋り方を「不満を表している」と解釈するのか。勉強になった。
しかし私は25年前から、これもポールの合いの手に聞こえ続けている。ちなみにこの箇所以外でも聞こえているようにも思う。

ポールの“I WANT YOU”

どうしてもここで触れておかなければならないことがある。
おそらく、“ABBEY ROAD”のアウトテイクのうち、もっとも物議を醸していると思われるのがこの“I WANT YOU”であり、しかもポールがヴォーカルをとるヴァージョンがある、というものだと思う。
このことは、この曲のレビューをするうえではやはり触れた方が、曲の成り立ちが一層明らかになると思うので、触れる。

しかし最近のYOU TUBEは本当に何でもある‥

この真偽については、マニアの間でも非常に楽しく議論がされている。
特に月太郎さんのサイトにはこの話題に限定したページが設けられ、非常に詳しい。

月太郎さんはまず自分の結論を提示されたのち、かつ疑問点も提示されている。そのうえで閲覧者の意見を募り、それにはコメントを加えることなく、そのまま紹介されている。
月太郎さんのサイトにしたがって、私の意見を述べさせていただくとしたら、「贋作である」。

ポールのものではない以前に、ビートルズのものではない。
理由は、月太郎さんのサイトにアップされている方で、「贋作」を主張されている方の理由とほぼ同じではあるが、少しコメントする。


(1)演奏が拙すぎる。

ビートルズは、上手いバンドである。クラブ回りやら、音の聞こえないスタジアムやら経て身に付けたライブ・テクニックもさることながら、66年からはレコーディング・テクニックを極め抜いている。アンソロジーを聴いても、ブートを聴いても思うことは、必ずレコーディングには充分なリハーサルを踏まえて臨んでいるように思えることだ。

映画“LET IT BE”のイメージがあるから、60年代のロック・シーンからすればビートルズの生演奏が酷いものに思えたかもしれないが…。

また、この曲が2月22日にトライデントで正式録音されたものであれ、ボーカルテストのためのリハーサルを誰かが盗み録りしたものであれ、演奏が拙すぎるし、曲がりなりにもレコーディング・スタジオから流出したものにしては音が悪すぎる。モニターを拾ったものだと仮定したら、今度は音が良すぎる…。
この時期の可能性として、映画のフィルムから落とされたもの、ということはあるかもしれないが、それにしてはちゃんと録音しようとした形跡が感じられる。

ルーフトップ・コンサートの数曲を聞けばわかるが、ビートルズは、こと録音、ということになれば、野外だろうがどこだろうがきちっとチューニングも行い、かつタイトな演奏をするバンドだと思う。ジョンのリード・ギターだってヴォーカルだって冴えている。

特に、どなたかがアップされていたように、とりわけこれは“リンゴのドラムではない”。
リリース・テイクのリズム・パターンをよく聴いて欲しい。1、2番とギターソロの3番、そして4番のリズム・パターンは異なり、非常に凝った作りになっているのに対し、あのテイクは全部同じパターンである。これも“リハ”だからかもしれない。
では“~it's driving mad,it's driving me mad…”の部分のリリース・テイクに較べて酷く単調なドラムス、ベースはどうか。これも“リハ”だからだろうか。


一人一人のプレイもワンパターンだし(そこが似ている、という人もいるが…)、特にアンサンブルが悪い。長年やっているビートルズは、お互いがグルーヴするポイントを心得ているが、この曲にはそれがない。
とりわけ、それぞれのパートのフィル・インには特徴があり、ワン・パターンである。ワン・パターンというのは、ビートルズの手法ではなく、ハード・ロックの手法としてのワン・パターンであるということだ。この演奏の延長線上にリリース・ヴァージョンはありえない、と思う。

ヴォーカル・ラインをギターでなぞった後に7thや9thのカッテイング・コードを入れるのはもともとブルースの手法ではあると思う(リリース・ヴァージョンでも効果的に使われてはいるが,、このヴァージョンは使いすぎ)が、これをこういう形で使うのが当時のハード・ロックの流行りであり、ドラムスについても、必ず倍で叩くフィル・イン、ベースのオクターブの使い方、そしてまたこういうパターンを循環してやること自体もハード・ロックの手法ではないのか?

ビートルズは、新しいことを次々に開発して取り入れたが、基本的には彼らのルーツである50年代のロックン・ロールの手法がベースにあると思う。
この後に及んで自分達の完成した演奏手法を棄て、クセは強いが簡素なハード・ロックの手法をそのまま導入する理由がない。この可能性を疑うなら、“HELTER SKELTER”を聴いて欲しい。これはリリース・ヴァージョンもアンソロジー・テイクも、完全にビートルズのグルーヴになっている。

思い入れが激しくて恐縮だが、私にも僅かながらバンド経験がある。今もであるが、なんとビートルズのコピーは難しいのだろう、と感じている。こんなに簡単にコピーできるような代物ではない。


(2)“SHE'S SO HEAVY~♪”のフレーズは、8月になってから追加されたものである。

というのは私の仮説ですが…。
題名も8月に“I WANT YOU (SHE'S SO HEAVY)”と改題されている。8月11日にはその部分のハーモニー・ヴォーカルを再録音した、との記録もあるが、(SHE'S SO HEAVY)と改題されていることからして、ハーモニー・ヴォーカルを重ねただけで改題するのだろうか?というのが私の疑問である。そもそもこの“SHE'S SO ~HEAVY”のフレーズ自体が新たに挿入されたからこそ、この曲が完成し、改題もしたのではないか?

ちなみにここのラインの唄い方が違い、フェイクであるならばなぜ忠実に唄わなかったのか、それはこの曲が2月22日にトライデントで録音された初期ヴァージョンであるからだ、とのご意見もある。
トライデントのオリジナル・テープが使われているという、後半3分7秒を良く聴いて欲しい。特にベースとドラムス。これが同じバンドの同じ日の演奏だろうか?
唄い方が違うのは、このバンドがそこそこ腕のあるバンドだからではないんだろうか?もともとフェイクを目的に作られたのではなく、カバーするつもりだったから、ではないのか?


(3)同時にブートに収録された、“I NEED YOU”と同じ演奏者による録音である。

ヴォーカルも同じ。フィル・インで倍叩くドラムスも同じ。録音状態も非常によく似ていると思う。「ジ・アイビーズ」による演奏だという説もあるらしい。
これらの曲がビートルズだというのなら、“HAVE YOU HEARD THE WORD?”の方がよっぽどビートルズらしい、と思ってしまう。(あの曲すら、後年ジョンに否定されている。)

かなり乱暴な書き方をしたことをご容赦いただきたい。私も相当、冷静さを失ってしまった。
もっとも私は、ブート音源がポールのヴォーカルではない、と申し上げているわけではない。私がお伝えしたかったのは、リリース・ヴァージョンはそれとは比較にならないほど素晴らしい、“古典的な”ビートルズのグルーヴに裏打ちされている、ということなのである。


“There! Cut the tape there.”

非常に鮮烈なエンディングである。それまでの分厚い循環するリフのエンディングとしては最高である。これも、このアルバムのストイックなイメージに貢献している。
エンディングのホワイト・ノイズも凄い。87年のCDリリースの際、EMIのエンジニアが本気で心配した、というのが良くわかる。
ちなみに、今日まで“THE BEATLES AT THE HOLLYWOOD BOWL”がCD化されない理由の一つが、あの歓声のCD化に問題があることも十分考えられる。


ビートルズはよく、お遊びをやってきている。“WHITE ALBUM”で言うと、“LONG LONG LONG”“HELTER SKELTER”“HAPPINESS IS A WARM GUN”“I'M SO TIRED”“PIGGIES”…。終わると見せかけて、なにかオマケをつけている。
“BUNGALOW BILL”はオマケで一旦ホッとさせておいて、突如ジョージの曲になってしまう。ジョンにしてもポールにしても、ソロアルバムでも頻繁に会話やら音やら残している。
穿った見方かもしれないが、レコードに付加価値を付ける。一つ前のアルバムなんか、曲間を全部それでやろうとしていた。
この曲の斬新なアイデアを“お遊び”と言ってしまうとミもフタもないが、最後まで気が抜けない。A面の最後を唐突に切り落としているが、符合するようB面の最後の“HER MAJESTY”の最後の一音も切り落とされている。極めて計算されている。

…ところで、本当に“There! Cut the tape there.”なんてジョンが言ったのだろうか?言いそうだけど、ちょっと誇張が入っていないか?
だいたい、テープを聴いている時に、言ってからすぐに切っても、間に合わないのではないか?!
iいずれにせよ、私はポールのヴォーカル・ヴァージョンよりも、ほんとはあと20秒あったテープの最後に、ビートルズはどんなエンディングをやらかしているのかを切に聴きたい。


ポールの髭、ジョンの髭

“I WANT YOU”のレコーディング風景を撮影した写真がある、と言って驚く人は、かなりビートルズに傾倒している人で、驚かない人はもっと傾倒している人か、あるいはあまり傾倒していない人か、傾倒の仕方が異なる人である(何のことだ‥)。

GET BACK BOOKの写真だが、よーく見て欲しい。

右の方でコーヒーを飲んでいますが…見えにくい?

Hige

ポールに髭がない!


これでどうだ!
Higenasi

これらの写真は、奇妙だ。
なぜなら、アップル・スタジオのセッション使用は1月31日までで、この日の様子は映画で見られるとおり(“LET IT BE”演奏シーンなど)ポールは髭をたくわえている。
その次のレコーディング・セッションは2月22日のトライデント・スタジオまで延期され、“I WANT YOU”をレコーディングしている。

では、これがトライデント・スタジオの風景か、と言われればそうとも言えない。他のショットで確認した天井の造形等、映画に出てくるアップル・スタジオに酷似している。それに、2月22日のセッションに参加していたはずの、ビリー・プレストンの姿もみられない。
とすれば、レコーディング・セッションは1月31日に終了したものの、翌2月の5日には再びアップルでルーフトップ・コンサートのミキシング作業が行われていることから、ビートルズはレコーディングこそしなかったものの、何らかのリハを行い、その際のショットの可能性は高いものと思われる。

しかし、である。

(1)リンゴが参加していたかどうかは不明だが、2月3日から“MAGIC CHRISTIAN”の撮影がスタートしている
(2)ジョージが2月7日から15日まで扁桃腺手術のために入院している
(3)ジョンの髭が伸びている!
(4)ポールを除く全員がセーターを着込んでおり、ヒーザーはコートまで着ているからかなり寒い日だったと思われる
(5)ジョージがレスポールを弾いているから、かなりハードな質感の曲を演奏していることが推測される(とは言っても、髭なしポールのショットは2種類あり、ダンガリー・シャツでベースを弾いているものとストライプシャツでスライド・ギターを弾いているものもあることから、必ずしも“I WANT YOU”と言えないけれど…)。
(6)ジョンがボーカルをとっているショットがあること
(7)2月のいつからかは判らないが、アップル・スタジオは2月に全面改装工事にとりかかっていたこと…

などから、必ずしも2月5日説が有力とも思えない。

みなさんが髭を剃るとしたら、どんな時だろうか?
それを考えると、やはり映画のクランク・アップでポールが剃った、と考えるのが妥当だろう。もう撮影がないのだから、完成したシーンの繋ぎでポールに髭があったりなかったり、ということもない。
そして同時にジョンが何らかの理由で“今度は俺の番だ!”とばかりに伸ばしはじめ、以降70年の1月20日までそのスタイルを保った。

私は、撮影日は2月5日またはその前後、撮影場所はアップル・スタジオ、そして演奏しているのは“I WANT YOU”、そういう結論にしたい。(01・3) 

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2008年8月 1日 (金)

BECAUSE

“Because , I want you.”

歌詞も含め、“LOVE”の習作ともいうべきこの曲のテーマリフは、“I WANT YOU”の項でも書いたが、同曲のテーマリフと似ている、と感じているのは私だけだろうか。
「似てないから感じない」「だからどうした」と言われる向きもあるだろう。
このサイトを立ち上げるにあたり、知り合いに頼んでピアノで「月光」を逆に弾いてもらおうか、とも考えたが、やめた。
タイトルの関連もある。“Because , I want you.”と一つのメッセージになるだろう…。(“Because you never give me your money”でもいいのだけれど…。)


この曲はジョージ・マーティンの弾くエレクトリック・ハープシコードがメインとなっているが、ジョンのエレキ・ギター、ポールのベースも使用されている。ハープシコード抜きのミックスで聴いてみたい方は、是非右チャンネルのみで聴いて欲しい。

ジョンは最初からこの曲を壮大な曲にしたかったようで、他のビートルズも賛成した。いよいよジョージ・マーティンの出番である。

それにしても、どうしてピアノを使わなかったのか?
あるいは、どうして弦楽を使わなかったのか?
エレキ・ハープシコード。
ピアノなら、もっとシンプルで、しっくりくるヴァージョンとも思えるし、もしそんなテイクがあるのならぜひ聴いてみたい。でもそれでは、あまりにシリアスなのかもしれない。ビートルズ“らしく”ないかもしれない。
思えば、ビートルズ時代にジョンが弾くピアノ曲というのが思い浮かばない(オルガン曲はあるけれど)反面、解散後に一気にピアノ曲が増えるのは、ピアノ=ポールという位置があったのだろうか。

ジョンが、この曲をギターで他のメンバーにデモした結果、ジョージ・マーティンはこのギターの音に合うように“よりクラシカルに”エレキ・ハープシコードをチョイスしたようである。

ジェフ・エメリックの外伝を読むと、ジョン(ギター)、ジョージ・マーティン(ハープシコード)、リンゴ(ハイハット)の3人でベーシック・トラックをポールがコントロール・ルームで指示して延々と録らせたらしいが、ベストテイクは最終テイクの1時間前に録れていたことが判明し、極めてバツが悪かったらしい。


ジョン・レノンという山下達郎

“Because the world is round , it turns me on…”のくだりを聞くと、“HAPPINESS IS A WARM GUN”の“she's not a girl, who misses much…”のくだりと似ているかな?と思う。
ジョンが自分でギターを弾きながら、スーッと唄いだす。“BECAUSE”のデモはこんな感じだったのかもしれない。

この曲は、この後のオーヴァー・ダブや“I ME MINE”を除けば4人のビートルズが最後に取り組んだ「新曲」だ。
もうほとんどアルバムは埋まっていて、たぶん“I WANT YOU”の収録も決まっていたんだろうから、ここにきて取り上げる「新曲」」でこんな冒険をやってのけるビートルズは、やっぱりビートルズだ。

この時期の状況から、最初からジョンが他のメンバーに「3声のコーラス・チューンをやりたいんだけど…」と持ちかけたと、想像できない。現に、“COME TOGETHER”でポールはジョンとうまくハモれなかった、と言っている。それならむしろ、さんざんジョージ・マーティンやらメンバー(ポール?)に持ち上げられて、コーラスが仕上がったと考える方が“らしい”。

ジョンにもポールにも、アルバムの中で最も優れた曲として“SOMETHING”を称賛されたジョージは、「ポールの作風に似た曲だけど、ジョンもシンプルな12小節の曲を書かせると非常にうまい。この曲が一番好きだ。それにしても、ハーモニーをつけるのにとても苦労した」とこの曲を評していた。
(そんな殊勝なことを言いながらも、自分のパートが終わるとスタコラサッサと第3スタジオへ行って“SOMETHING”と“HERE COMES THE SUN”のステレオ・ミックスを作り、オーケストラのオーヴァー・ダブを検討した、とされているけど‥)

先述の外伝によると、この曲にかけるメンバーの意気込みは凄かったようだ。ベーシックトラックのあと週末をとり、休養十分で何度も何度もトライしたらしい。

さて、この曲を聴く時、皆さんは誰の声がよく聞こえるだろうか。
“FREE AS A BIRD”のポールとジョージのハーモニーを聞いたとき、この曲を思い起こした人も多いはずだ。

ジョン以外の声がよく聞こえるだろうか?こんな時の、アンソロジー・ヴァージョンである。こいつをよく聴いてみる。それでもわからなければ、3曲前に戻ってみて、“OCTOPUS'S GARDEN”のポールとジョージのヴォーカルを聴いてみる。
うん、これはよくわかる。特にジョージのヴォーカルは不安定である。みなさんも試していただきたいが、こうするとジョージの声が“BECAUSE”でも聞こえるようになる。

ポールは…一回目の“Love is old,love is new”の「(ラヴ)イゾ~♪」の部分で「あっ、ポール?」と一瞬思うが、どうなんだろう。ほとんどファルセットの高いところでも唄っているのでしょうか?

ジョンの声しか聞こえない、ということであれば、ひょっとしたら、正解なのかもしれない。
リード・ボーカルはあくまでジョンで、ジョンの1人3声を中心にミックスされたのかもしれない。
“GOOD NIGHT”にしろこの曲にしろ、本来ならさらっとジョンが唄っても佳作になるはず。やっぱり口説かれて3人3声になったのかも…。
よく“THIS BOY”“YES IT IS”を彷彿とさせるような、とか言われるが、3声なら両曲の方が好きだ。
個人的にこの曲は“LOVE”のように、あるいは“HAPPINESS IS A WARM GUN”のように、ジョンに弾き語って欲しいけど‥ね。

ジョン・レノンがビートルズに対してこの時期何を求めていたのか、はからずもそういったことに思いを馳せてしまうような、私にとってはそんな複雑な曲である、それはBecause…。

・もう一つのメドレー

私は、この曲の前に“YOU NEVER GIVE ME YOUR MONEY”を持ってきたらどうか、と思う。

この曲のベーシック・トラックがレコーディングされたのが8月1日(金)。メドレーの試験的な編集ヴァージョンが作成されたのが2日前の7月31日(水)。だからこの曲はもともとメドレー候補からは外れていたのだ、とも言える。

しかし一方でポールは、“YOU NEVER GIVE ME YOUR MONEY”のエンディングに困っていた。この曲のエンディングが最終的に解決したのが翌週の8月5日(火)である。
…何より、“…all good childeren go to heaven”の音の下降と、この曲のイントロのアルペジオとは非常にマッチする。まるで“ROCK SHOW”~“LOVE IN SONG”みたいだ!さらには“SUN KING”にもよく繋がる。

このレコーディングのタイミングと、曲調から、そんなことを妄想するのも楽しい。それに、次は“I WANT YOU”だ。(01・9)

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