BECAUSE
・“Because , I want you.”
歌詞も含め、“LOVE”の習作ともいうべきこの曲のテーマリフは、“I WANT YOU”の項でも書いたが、同曲のテーマリフと似ている、と感じているのは私だけだろうか。
「似てないから感じない」「だからどうした」と言われる向きもあるだろう。
このサイトを立ち上げるにあたり、知り合いに頼んでピアノで「月光」を逆に弾いてもらおうか、とも考えたが、やめた。
タイトルの関連もある。“Because , I want you.”と一つのメッセージになるだろう…。(“Because you never give me your money”でもいいのだけれど…。)
この曲はジョージ・マーティンの弾くエレクトリック・ハープシコードがメインとなっているが、ジョンのエレキ・ギター、ポールのベースも使用されている。ハープシコード抜きのミックスで聴いてみたい方は、是非右チャンネルのみで聴いて欲しい。
ジョンは最初からこの曲を壮大な曲にしたかったようで、他のビートルズも賛成した。いよいよジョージ・マーティンの出番である。
それにしても、どうしてピアノを使わなかったのか?
あるいは、どうして弦楽を使わなかったのか?
エレキ・ハープシコード。
ピアノなら、もっとシンプルで、しっくりくるヴァージョンとも思えるし、もしそんなテイクがあるのならぜひ聴いてみたい。でもそれでは、あまりにシリアスなのかもしれない。ビートルズ“らしく”ないかもしれない。
思えば、ビートルズ時代にジョンが弾くピアノ曲というのが思い浮かばない(オルガン曲はあるけれど)反面、解散後に一気にピアノ曲が増えるのは、ピアノ=ポールという位置があったのだろうか。
ジョンが、この曲をギターで他のメンバーにデモした結果、ジョージ・マーティンはこのギターの音に合うように“よりクラシカルに”エレキ・ハープシコードをチョイスしたようである。
ジェフ・エメリックの外伝を読むと、ジョン(ギター)、ジョージ・マーティン(ハープシコード)、リンゴ(ハイハット)の3人でベーシック・トラックをポールがコントロール・ルームで指示して延々と録らせたらしいが、ベストテイクは最終テイクの1時間前に録れていたことが判明し、極めてバツが悪かったらしい。
・ジョン・レノンという山下達郎
“Because the world is round , it turns me on…”のくだりを聞くと、“HAPPINESS IS A WARM GUN”の“she's not a girl, who misses much…”のくだりと似ているかな?と思う。
ジョンが自分でギターを弾きながら、スーッと唄いだす。“BECAUSE”のデモはこんな感じだったのかもしれない。
この曲は、この後のオーヴァー・ダブや“I ME MINE”を除けば4人のビートルズが最後に取り組んだ「新曲」だ。
もうほとんどアルバムは埋まっていて、たぶん“I WANT YOU”の収録も決まっていたんだろうから、ここにきて取り上げる「新曲」」でこんな冒険をやってのけるビートルズは、やっぱりビートルズだ。
この時期の状況から、最初からジョンが他のメンバーに「3声のコーラス・チューンをやりたいんだけど…」と持ちかけたと、想像できない。現に、“COME TOGETHER”でポールはジョンとうまくハモれなかった、と言っている。それならむしろ、さんざんジョージ・マーティンやらメンバー(ポール?)に持ち上げられて、コーラスが仕上がったと考える方が“らしい”。
ジョンにもポールにも、アルバムの中で最も優れた曲として“SOMETHING”を称賛されたジョージは、「ポールの作風に似た曲だけど、ジョンもシンプルな12小節の曲を書かせると非常にうまい。この曲が一番好きだ。それにしても、ハーモニーをつけるのにとても苦労した」とこの曲を評していた。
(そんな殊勝なことを言いながらも、自分のパートが終わるとスタコラサッサと第3スタジオへ行って“SOMETHING”と“HERE COMES THE SUN”のステレオ・ミックスを作り、オーケストラのオーヴァー・ダブを検討した、とされているけど‥)
先述の外伝によると、この曲にかけるメンバーの意気込みは凄かったようだ。ベーシックトラックのあと週末をとり、休養十分で何度も何度もトライしたらしい。
さて、この曲を聴く時、皆さんは誰の声がよく聞こえるだろうか。
“FREE AS A BIRD”のポールとジョージのハーモニーを聞いたとき、この曲を思い起こした人も多いはずだ。
ジョン以外の声がよく聞こえるだろうか?こんな時の、アンソロジー・ヴァージョンである。こいつをよく聴いてみる。それでもわからなければ、3曲前に戻ってみて、“OCTOPUS'S GARDEN”のポールとジョージのヴォーカルを聴いてみる。
うん、これはよくわかる。特にジョージのヴォーカルは不安定である。みなさんも試していただきたいが、こうするとジョージの声が“BECAUSE”でも聞こえるようになる。
ポールは…一回目の“Love is old,love is new”の「(ラヴ)イゾ~♪」の部分で「あっ、ポール?」と一瞬思うが、どうなんだろう。ほとんどファルセットの高いところでも唄っているのでしょうか?
ジョンの声しか聞こえない、ということであれば、ひょっとしたら、正解なのかもしれない。
リード・ボーカルはあくまでジョンで、ジョンの1人3声を中心にミックスされたのかもしれない。
“GOOD NIGHT”にしろこの曲にしろ、本来ならさらっとジョンが唄っても佳作になるはず。やっぱり口説かれて3人3声になったのかも…。
よく“THIS BOY”“YES IT IS”を彷彿とさせるような、とか言われるが、3声なら両曲の方が好きだ。
個人的にこの曲は“LOVE”のように、あるいは“HAPPINESS IS A WARM GUN”のように、ジョンに弾き語って欲しいけど‥ね。
ジョン・レノンがビートルズに対してこの時期何を求めていたのか、はからずもそういったことに思いを馳せてしまうような、私にとってはそんな複雑な曲である、それはBecause…。
・もう一つのメドレー
私は、この曲の前に“YOU NEVER GIVE ME YOUR MONEY”を持ってきたらどうか、と思う。
この曲のベーシック・トラックがレコーディングされたのが8月1日(金)。メドレーの試験的な編集ヴァージョンが作成されたのが2日前の7月31日(水)。だからこの曲はもともとメドレー候補からは外れていたのだ、とも言える。
しかし一方でポールは、“YOU NEVER GIVE ME YOUR MONEY”のエンディングに困っていた。この曲のエンディングが最終的に解決したのが翌週の8月5日(火)である。
…何より、“…all good childeren go to heaven”の音の下降と、この曲のイントロのアルペジオとは非常にマッチする。まるで“ROCK SHOW”~“LOVE IN SONG”みたいだ!さらには“SUN KING”にもよく繋がる。
このレコーディングのタイミングと、曲調から、そんなことを妄想するのも楽しい。それに、次は“I WANT YOU”だ。(01・9)
| 固定リンク
「ABBEY ROAD」カテゴリの記事
- ‘Anniversary Edition’ 答え合わせ編(2019.10.01)
- 'Abbey Road' 50th Anniversary Edition、 直前対策!(2019.07.20)
- Carry that “Carry That Weight”(2018.11.04)
- オリジン(2017.10.28)
- 2017年、夏休み自由研究。(2017.09.02)
この記事へのコメントは終了しました。
コメント