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2008年7月25日 (金)

POLYTHENE PAM

・ジョン・レノン、その二面性

彼の女性観に対する一面である。おそらく“WHAT'S THE NEW MARY JANE”はこちらの面で、もう一つの面は“WOMAN”で聴ける。
この歌詞を女性蔑視だ、ともし言うなら、そう言う見方自体が女性蔑視だと逆にお叱りを受けるかもしれない(何かどこかの国の首相答弁のようだが)。
Mr.Mustardの後だけに、この曲の刺激度がかなり減少しているけれど、この曲の魅力の一つにはこの内容をリヴァプール訛りで唄うことにある。それがかえって卑俗な印象さえ聴く者に与える。
例えば、リバプールの伝承歌“MAGGIE MAY”もビートルズによってレコーディングされているが、非常に即興的な要素を差し引いたとしても同様な印象がある、と言えばご理解いただけるだろうか。

自分に女性に対する二面性があることを、本人自身後年のインタビューでも語っている。
ここで私がわざわざそんなことを申し上げるのは、ジョン・レノンがどういった女性観を持っていたかを書くためではなく、この人は時としてある種の人物に向けられた、収集のつかない自分の感情を創作のパワーに利用することがある、ということを書いておきたいと思ったからである。
実際に、ポールに向けられた感情は“HOW DO YOU SLEEP?”となっているし、障害者に向けられた感情は「アンソロジー」の中でも触れられている。

この曲の歌詞内容、そしてリヴァプールのイントネーションで唄うこと、そして鋭いギター・カッティングは相乗的な効果を生み出し(ちなみにこのギター、ルウィソンは12弦と記しているが、間違いである可能性は高い。)、“COME TOGETHER”や“I WANT YOU”で聴けたクールでアグレッシブなジョンの曲に仕上がっている。
他のメンバーのプレイも素晴らしいが、とりわけリンゴのドラミングは壮絶である。バックでハーモニーを付けているのが誰かじっくり聴いてみるのも楽しい。

・サビ

ある書物で、この曲が“EVERYBODY'S GOT SOMETHING TO HIDE EXEPT ME AND MY MONKEY”に似ている、ということを指摘されている方がいた。この曲は“ホワイト・アルバム”セッションの際にすでに取り上げられていたようであるが、結果的にホワイト・アルバムやゲット・バックから漏れた理由というのはなんだろう。
アンソロジー・ヴァージョンを聴いてもわかるが、この曲もやはりサビらしいサビがない。思えば、ホワイト・アルバムでも明確なサビメロがあるのは“I'M SO TIRED”“YER BLUES”“REVOLUTION”の3曲くらいしかない。むしろゲット・バック・セッションで取り上げられた“DON'T LET ME DOWN”“DIG A PONY”“ACROSS THE UNIVERSE”なんかの方が曲構成が練られている、と言えるかもしれない。

1月24日のゲット・バック・セッションで聴くことのできる演奏では(…ということは、「ブートで聴くことのできる」と同意になってしまうが)、1stヴァースと2ndヴァースの間奏でジョン以外の誰かが長く、かつマズい(というかフザケたギター・ソロを延々と弾いているのが聞こえる(直前の曲が“TWO OF US”のようなので、ポールかもしれない)。
そのためにジョンが2ndヴァースに入れなくてイラっときているところがあるのだが、非常におもしろい。一瞬、この曲の魅力はスピード感にあることをジョンも意識しているように感じる。

もしもビートルズに勢いがあった時期であれば、…いつが勢いがあったのか、なかなか難しいが…この曲をもっとうまく仕上げることができたかもしれないとも思う。ホワイト・アルバムのような制作をやっていればそれぞれのエゴが出てしまってやはり完成は難しかったかもしれない。
裏を返せば、そのあたりを「メドレー」やら「ジョージ・マーティン」やら、または「短期制作」やら「8トラック」やらといった手法でクリアしているのがこのアルバムの奇跡であり…まるでと「だから野球は面白い」風の解説で、誠にもって申し訳ない。

あまりに上手く言おうとしているかもしれないが、むしろサビのないこのフレーズ、ジョンの3曲は“YOU NEVER ~”で始まるこのメドレーのサビの役割をきっちり果たしているのはないだろうか。
ちょうど“WE CAN WORK IT OUT”でジョンの作った“LIFE IS VERY SHORT~”のラインが決まるように…。
しかしながら、ゲット・バック・セッションでは“I'VE GOT A FEELING”のように1曲にする、というアイデアが実行されたのに、半年後にはあくまでも1曲は1曲とクレジットとしたうえでメドレー化するほかなかった、と考えると、グループとして末期症状にあったことも感じさせる。

ともあれ、この曲はビートルズの最後のアルバムで最後に聴けるビートル・ジョンの曲となっている。

・またしてもHER MAJESTY

それにしても、当初予定だった“MEAN MR.MUSTARD”“HER MAJESTY”“POLYTHENE PAM”の流れだけれど、編集したフェイクのブートもでているが、お持ちでない方も、MDで編集して試して聴いて欲しい 。アコースティック・サウンド、歌詞という部分で.は繋がりがあるかもしれないが、突如ギター一本の弾き語りが入ることで流れが一旦引っ込んでしまうのだ。「01-yattemita.wma」をダウンロード

それでポールは仮の編集テイクを聴いて、「“HER MAJESTY”が気に入らないな。捨てちゃえ」と言い、最終的にリリースされたのはさる曲を取り除いただけのもの、となったそうである。つまり、“MEAN”と“PAM”とは結果的に、偶然にメドレーとなった可能性もある。
ちなみに、最もこのメドレーの作業で“problemtic”だったのは“YOU NEVER~”と“SUN KING”のクロスフェイドだったそうである。(01・9)

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