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2008年7月 9日 (水)

MAXWELL'S SILVER HAMMER

“MAWELL'S”って何曲目?

A面3曲目にしてはじめてポールの曲である。
“I SAW HER STANDING THERE”“DRIVE MY CAR”“SGT.PEPPERS LONLEY HEARTS CLUB BAND”“BACK IN THE U.S.S.R”と華々しくアルバムのオープニングを飾ってきたポールが、3曲目まで出てこない。
今回は一歩引き、B面メドレーで勝負をかけたのだろうか。

ちなみに、この書き出しのためだけにオリジナル・アルバムの曲順を見直したのだが(笑)、初期のアルバムでポールが3曲目、とかいうのは意外に珍しくない。
もっとも、コーラスものもあるので一概には言えないけれど、驚いたのはアルバム“A HARD DAY'S NIGHT”で、このアルバムでは“AND I LOVE HER”“THINGS WE SAID TODAY”“CAN'T BUY ME LOVE”の3曲だけなんですよね。これはジョン大爆発、ってなアルバムです。

さて、“ABBEY ROAD”のアナログLPをお持ちの方は、すぐさま取り出して裏返して下さい。“MAWELL'S”って何曲目に書かれていますか?

私は74年と80年の2回、アナログを買っています。1枚目はドロボー猫にやられた(本当に悔しい…)ので手元にないけれど、曲順と表示が違うので驚いた記憶がある。
2枚目は、“SOMETHING”と位置が逆になり、“COME TOGETHER”の次で2曲目に書かれている(確か1枚目もそうだった…?)。
この由来は、最終的に曲順が変更となったためにジャケット訂正が間に合わなかった、とされていますので、私もそうかいな、と思っていた。

しかし、マーク・ルウィンソンの書物によれば、曲順はリリースと「“OCTOPUS'S GARDEN”と“OH!DARLING”の位置を逆にした」との記述もある。これはどういうこと?

二つは全く別の話で、A面の曲順は“COME TOGETHER”“MAXWELL'S SILVER HAMMER”“SOMETHING”“OCTPUS'S GARDEN”“OH!DARLING”“I WANT YOU(SHE'S SO HEAVY) ”ということなのか?ちなみに私はこの曲順に並べ替えて聞いてみた。

すると!これは面白い!
この曲が2曲目に来ることで、A面がグッと明るくなる。この曲自身も、“COME TOGETHER”のファンキーな感じから一転して、いっそう明るさが増し、非常にいい感じである。

ただし、である。“SOMETHING”について言えば、この曲と“OCTOPUS'S GARDEN”というオチャラケ2曲(ゴメンナサイ)に挟まれると、小曲になってしまう感じがする。もし“SOMETHING”を際立たそうとするのなら、これはまずい。
これが現行の曲順になった理由かどうかはわからないが、少なくともこのA面をストイックなものにするのなら、“COME TOGETHER”のあとには“SOMETHING”である。

ちなみにルウィソンの記述を無視して、“OH!DARLING”“OCTOPUS'S GARDEN”だけを現行曲順にすると、当然ながら現行曲順に印象が近づく。要は“SOMETHING”の位置が問題なのだ。

で、結局最終曲順がストイックな雰囲気となったために割りをくったのがコミカルな2曲のはずなんだけど、いかんせんリンゴはラッキーです。これはまた“OCTOPUS'S GARDEN”のところで書かせていただきます。
結局は、この曲だけが割りを食った形で、私がこの曲がなんか好きになれない、と思う理由の一つが曲順にもあったことが判明した。


ブルー・チーズ

みなさんは、こういったポールのシンプルなラブ・バラードでもない、ロックでもないお遊び感の強い曲はいかがでしょうか?
“HONEY PIE”とかどうですか?“ROCKIE RACOON”とか。このテの曲は、ブルー・チーズのようなもので、好き嫌いがはっきりする曲かも。

私はこの曲はもともとジョンの“THE CONTINUING STORY OF BUNGALOW BILL”のポール風解釈じゃないか、とも思ったりするが、やっぱりあんまり愛着がわかないのはポールが“奇を衒っている”
のように聞こえてしまうのである。じゃあジョンの“メリー・ジェーン”
はどうだ、と言われると困るのだが‥。


映画“LET IT BE”の中で、ポールが“THE LONG AND WINDING ROAD”をジャズっぽく歌ったり、さらに本意気で唄ったにもかかわらず、誰もノッてこないのでまたふざけて唄って結局止めちゃったりするシーンがあるが、妙に“スベった”感が出てしまう。
当の本人はいたってまじめに取り組んでいるにもかかわらず、昔からサービス精神が旺盛すぎるだけに、こういう曲をやるとますますその一環に聞こえてしまったりするのは、こういった音楽に聞き馴染みがなく、歌詞のユーモアやウィットが理解できないからだろうか?

サービス精神が多すぎる、というと、70年代のライブの際、決まって“YESTERDAY”やら“THE LONG AND WINDING ROAD”やら観客大期待の曲の前に、わざと全然違う歌詞を歌ってみたりして「焦らす」ことがあった。後年になって、久しぶりに大衆の前で演奏しはじめたら、またそういうことをやっていた。89年日本公演の記者会見上では、確か“MATCH BOX”なんかをやっていた。
それは、彼の照れ隠しか、プライドの高さか、サービス精神か、遊び心か、その全てかである。

悩み多きこの曲の完成形は?

ジョンのインタビューによれば、この曲はポールが何とかシングルにしようと努力した曲だそうである。いろいろと試みたが結局ダメだったようで、「アルバムの中で最も金と時間を費やした曲」と言っている。

ビートルズの場合、テイク1からアレンジがほとんど変らない曲もあれば、リリース・ヴァージョンがぜんぜん趣きを換えてしまう曲がある、と思われる。つまり、テイクを重ねるごとに、少しずつ完成して…というのはむしろ少数なのではないだろうか。
この曲や、“OB-LA-DI OB-LA-DA”や“YOU MOTHER SHOULD KNOW”(但し成功例。いずれもアンソロジー・ヴァージョンを聞いてください)などは、この後者に属する曲だったのではないか?

1月7日に行われたセッションでは、40分近くもこの曲のリハをやっている。そのテイクでは倍の速度で演奏してみたり、1月10日には冗談半分だけどジョンにボーカルをとらせたりしてて、本当にアレンジに苦しんでいるのがわかる。さらにはその半年後、7月9日に録音されたアンソロジー収録ヴァージョンでも後半フェイク・ヴォーカルみたいなことをやっているが、ここまで来てもまだ悩んでいる…。

ポールの頭の中では素晴らしいメロディが流れているはずなのだけれど、どうアレンジするか四苦八苦するのは、バンドの結束が緩んでしまったからか、それとも…もともと他のメンバーをインスパイアするだけの楽曲の力がなかったのか。曲の途中で笑っているのも、かえってアイロニーを感じる。

彼のソロアルバム「フレイミング・パイ」のセルフライナーノーツで、「…アンソロジー・プロジェクトをやって、昔は非常に楽しんでレコード作りをしていたことを思い出した。」とポールは言っている。裏を返せば、彼のソロ活動は表向き以上に「生みの苦しみ」は多かったのではないだろうか。

話を戻して、個人的には実はこの“GET BACK SESSION”の頃のラフな演奏が一番この曲の持ち味を出しているようにも思う。リンゴも“砂袋”ドラムだし、ベースもギターもブンチャカやっているだけで、かえって非常スワンプっぽい。
あ、ブートなんか買わなくても、映画“LET IT BE”で見ることのできるリハの状況とそんなにサウンド的には変わりません。

完成ヴァージョンはやや緊張した感じのヴォーカルではじまっていて、そのためかよくこの曲が「残酷な内容をサラっと歌っている」と評されるけれど、映画で見るように本来は非常にラスワンプっぽくて、歌詞内容と物語性、演奏からしてもともとこの歌の成り立ちは、“MAGGIE MAY”のようなエログロ伝承歌のようなものを念頭においていたのかも。
結局完成に苦しんだのも、そもそもラフ、口笛、鼻歌、スキャット、そういうのがピッタリくるスワンプっぽい曲を、洗練されたアルバムの中に持ち込もうとしたり、シングル化しようとしたことに無理があったのかもしれない。

控え目にみても、完成ヴァージョンは磨き過ぎ、かな?ムーグやジョージのリードギターのソロも要らないなあ、私は。
ただし、2ndヴァースからボーカルの裏で静かに聞こえるムーグの音色は魅力的である。
主に右側から聞こえるが、3rdヴァースに入って、一層素敵である。この音に集中してこの曲を聴くと、この曲がもともと持っている素晴らしいメロディー・ラインに私は心奪われるのである。


・イントロ?

“ABBEY ROAD”の最後のセッションは、8月25日(月)に行われたこの曲と“THE END”の短縮作業である。
あのティッテンハーストの“暗い”フォトセッションの後でも、ポールはこの曲にまだ納得いかず、イントロを触っている。いくつものイントロ用のサウンドエフェクトが作成されたが、結局どれも使用されなかったとのことである。

また、短縮された秒数は7秒で、どこが短縮されたのかはわからないが、もともとあったイントロ(アンソロジーでも一部聞ける)は10秒程度だったから、イントロがカットされた可能性は高い。このアルバムの曲のイントロやアウトロには変ったものが多く、この曲もいきなり始まっているので“HER MAJESTY”のようにメドレーから切り取った可能性もあるかもしれないが、最後までイントロがあったのならこれは薄い。

曲調的にも、ある変った人物について唄っている歌詞的にも、“MEAN MR.MUSTARD”に近いものを感じる。“
WHITE ALBUM”のサイド2(アナログで言えば)に“BLACK BIRD”“PIGGIES”“ROCKY RACCOON”と動物モノを並べた前科もあるので、ひょっとしたら“HER MAJESTY”が入る前に“MUSTARD”“MAXWELL”“PAM”の並びが頭にあったのかも分からない。繋がりもよい。

ところで、「クイズカルなジョーン」って本当にジョンのことではなく、マックスは本当にマッカートニーじゃないの?(00・11)

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